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だから、言わんこっちゃない ~EEIE Editor's VOICE~

11.05.18

「今こそ自分の愛するもののチカラを信じて、揺るぎない日常を取り戻そう。」

あの東日本大震災から早2カ月が過ぎ、でも行方不明者の数は今だに増え続け、避難者の皆さんの過酷な状況も変わらず...。一時の自粛ムードは和らいだけれど、この国を覆う暗鬱な空気はまだまだ晴れそうもありません。

震災後にTVや新聞、雑誌など、様々なメディアで専門家やジャーナリスト、有識者、知識人、あるいは文化人と言われる人々の論評や様々な批判、被災地からのレポートを目にし、耳にしたが、何か現実感やリアリティを感じられなかった。そんな中、4月21日付けの読売新聞朝刊の文化欄に掲載された、作家の角田光代さんが被災地を訪れた寄稿文が胸に響いたので、ここでご紹介しようと思います。

「自然の猛威という言葉と、その光景との、なんと不釣り合いなことだろう。自然という言葉から喚起する何ものもそこにはなく、猛威という言葉ですらちっぽけなものに思える。(中略)

3月11日以降、すべてが大きく変わってしまったことを、今誰もが感じている。震災は、多くの人のいのちや暮らしばかりでなく、言葉の意味すらも奪っていったように私は感じている。自然や猛威という言葉がちぐはぐに思えるように、海という言葉を、波という言葉を、大地という言葉を、痛みもなく、かなしみもなく、恐怖もなく、もう使うことができない。そしてその痛みもかなしみも、人によってまったく異なるはずだ。がんばろうという言葉に励まされる人がいる一方で、苛立ちを覚える人も、傷つく人すらいるだろう。以前のようにシンプルな言葉で私たちが無邪気に語り合うことは、もしかしてもうできないかもしれないとすら、思う。」

そんな想いの中、角田さんは、倒壊した家々の真ん中に建っていたマンションの3階と4階の窓に洗濯物と布団が陽射しを受けて翻るのを目にして、次のように想いを変えます。

「言葉の意味が変わったことをおそれて、相手の使う言葉との差異をおそれて、沈黙してはならない。無力感にのみこまれてはならない。3月11日の前にあったものの多くは戻らない。でも、戻るものもあると私は信じようと思う。かたちや意味が変わっても、何年かかっても、暮らしや日常や、海や雨といった言葉を以前よりずっと大きな意味合いでもって私たちは獲得し、共有できることを信じたいと思う。

洗濯物と布団は、そこここで咲きはじめている桜のように、たんぽぽのように、強くて、うつくしくて、揺るぎない風景だった。」

この文章を読んで、角田光代さんの感性の素晴らしさ、作家という職業を生業にする人の言葉の力強さを思い知らされるとともに、自らも言葉や情報を発信することを生業に生きている私が今すべきことを痛感しました。

そう、自然のもたらす暴力性の前で沈黙するのではなく、無力感に陥るのではなく、日々変質していく言葉の意味と今こそきちんと向き合って、言葉の新たな力を取り戻そう。そして、 毎日、起きて食事して、洗濯して、晴れた日には洗濯物と布団を干して、いつもと変わらず、色んな人と言葉を交わして...、そんな何気ない、だからこそ揺るぎない日常の風景を取り戻そう。日々のそんな営みの向こうに「復興」という言葉も立ち上がってくるのでしょう。

そんな逞しくも力強い角田さんの文章に勇気づけられた翌日、4月22日(金)の夜、VOICEの人気連載だった「grafが近畿2府4県を旅して考える、きれいなくらし。」で2年前に訪ねた、川西在住のプラントハンター、西畠清順さんの、中之島のgrafビルで行われた、初めての著書の出版記念パーティーにお伺いしました。

中央が清順さん(左)で、grafの服部滋樹さん(右から2番目)、川西万里さん(左端)、料理研究家の堀田裕介さん(左から2番目)と一緒に。右端は「プラントハンター見習い中?」の弊社スタッフ。

清順さんとはEEIEの取材がきっかけで出会い、その後、清順さんのご配慮で、お知り合いの猪名川町の山あいに住んでいらっしゃる山田のおばあちゃんから畑の土地をお借りして、grafさんと一緒にミーツファームをスタート。その畑作りの様子は月刊誌『ミーツ・リージョナル』の連載「Meets agriculture」でご紹介しています。

また、ミーツファームにgrafさんに農作業小屋を建ててもらって時に、その記念として清順さんに樹齢250年のオリーブの樹も植えて頂いて、その様子もEEIEで紹介しました。

清順さんのブログ「花の奇跡を信じないひとは見てもしょうがないブログ」でも、その様子やミーツファームが取り持ってくれた心温まるこぼれ話ミーツファームが取り持ってくれた心温まるこぼれ話を紹介してくれています。

そんなお付き合いを通じて、清順さんの植物に全身全霊を掛けて愛情を注ぐ姿や気さくで飾らない性格、植物と人の取り持つご縁を大切にするところに感銘を受けて、EEIEやミーツファームで知り合った我々も、grafのスタッフの皆さんも、「ほんま、惚れ惚れとするええ男やなぁ~」とその魅力に惹かれてしまった次第で...。

そんな清順さんの初めての著書が3月末に発売されました。 題して、『プラントハンター 命を懸けて花を追う』。 徳間書店より絶賛発売中です(定価 1,470円)

清順さんの初めての本『プラントハンター 命を懸けて花を追う』(徳間書店、1,470円)絶賛発売中です!

本の内容は、清順さんがプラントハンターとして、世界中を旅して植物を探す中で巡り会ったエピソードや様々な人々との出会いを軸に、植物を追い求める毎日で気付いたり考えた人生の中でとっても大切な事柄、そして何よりも清順さんの植物への胸一杯の愛が詰め込まれていて、読むと自分も植物の奇跡を信じたくなる、そんな幸せになれる1冊です。

清順さんは3月20日放送のMBS系列『情熱大陸』にも登場。 まさに大ブレイクといった感ですけど、でも清順さんにとってはそんなマスコミで取り上げられたりよりも、植物を探し、植物と暮らし、植物と愛する毎日がもちろん大事であって...。

grafビルで行われた清順さんの出版記念パーティーは、川西さんたちの唄と音楽、清順さんの愛する植物と料理研究家の堀田さんのフードスケープのコラボでお客さんをお迎えして、graf代表の服部滋樹さんの愛溢れる挨拶をはじめ、grafのスタッフや清順さん縁の人々が勢揃いで清順さんの本の出版をお祝いしていて、清順さんの飾らない素敵な人柄そのままに、素敵なパーティーでした。

仕事で遅れて、もうパーティーもほぼ終わってから会場に着いたんですが、色んな人に囲まれていた幸せそうな清順さんと話すと、「ほんとEEIEで取材してもらってからやねん、なんか色々と変わってきたのは...」って言ってくれて、こちらこそ感謝感激。胸いっぱいになりました。いやいや、全ては清順さんの魅力であり(それはイコール植物の魅力でもあり)、人を惹き付けるチカラであり、自分の信念を貫き通す力の賜物ですよ!そんな清順さんですが、震災以降、被災地の皆さんを元気づけるためのオファーも増えていて、被災地に様々なカタチで植物をお届けすることで、被災地の皆さんに心安らいで頂く活動をされているそうです。

清順さん曰く「プラントハンターって、要はその時代その時代、その瞬間に必要とされている植物を見出し世に送り届ける仕事だと思う」。今まさに、清順さんの愛する植物が、そして植物への清順さんの愛が必要とされているんだと思う。

  • パーティー会場に展示されていた清順さんの「作品」。会場に駆けつけたときには、堀田さんが作ったフードスケープはもうすっかりありませんでした。
  • 「プラントハンター見習い中?」の弊社スタッフに清順さんから贈られた言葉。『念ずれば花ひらく』そう、信じ念じ続けることが大切です。

多くの人のいのちや暮らしを奪い、言葉の意味すらも変質させてしまった震災の後、それでも角田光代さんが作家である自らが背負って立つ言葉のチカラを改めて信じ続けつつ被災地を想うとの同じように、清順さんは自らが愛する植物のチカラを、花の奇跡を信じつつ、彼なりのやり方で被災地に想いを届けて...。

そうして、様々な人々がいつもと変わらない暮らしの中で、震災を機会に自らの暮らしを見つめ直して、私たち一人一人が生業とするもの、暮らしの中で拠って立つものの意味合いを今一度考え、そして信じ続けて生きることを積み重ねることで、何気ない、だからこそ揺るぎなく大切な日常の風景を取り戻していけるのだと思います。

出版記念パーティーの会場になった中之島のgrafビルでは、西畠清順さんとgrafさんがコラボして、今年で4年目を迎える『植物のある暮らし』展が6月26日(日)まで開催されています。会場を訪れたら、清順さんが植物を愛し、花の奇跡を信じる理由がきっと分かると思います。自然の生命力と向き合うことで豊かな感性を暮らしの中に見つけるきっかけに、ぜひ一度、訪れてみてください。

『植物のある暮らし 4』
2011年4月23日(土)~6月26日(日)
12:00~20:00(日・祝は~19:00)
月曜休(祝日の場合は翌日休)
場所:graf bld 3F graf living : shop showroom
http://www.graf-d3.com/event/plantslife_4/index.html

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エルマガジン社/EEIE エディターズ 「快適できれいなくらし」の姿を追い求め、日々、取材や編集に明け暮れるエルマガジン社EEIEエディターチーム。三者三様なパーソナリティを全開に、仕事漬けの毎日で、自らの家庭での暮らしは「快適できれい」とは正反対のところが悩みの種…。
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