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grafが近畿2府4県を旅して考えるきれいなくらし

11.02.23

Chapter.2 千利休も愛用した伝統の名産品『能勢菊炭』を守り継ぐ。

古くは平安時代にまで遡る歴史を持つ『能勢菊炭』の伝統を守り継ぐ、炭焼き師の小谷義隆さん(中央)と。左端が今回のナビゲーター役の福田アイさん。

次に訪ねたのは、能勢の名産品の1つ『能勢菊炭』を守り継ぐ炭焼き師、小谷義隆さんの工房[能勢さとやま創造館]。炭は炭でも、見るも美しい菊の花のような断面を持つ炭。それが猪名川北部の能勢地域一帯で作られてきた『能勢菊炭』です。能勢のランドマーク、妙見山のふもとの里山で育成されたクヌギを使った炭です。

福田さん「小谷さんの窯にちゃんとお伺いするのは私も初めてで、楽しみにしてきました」

小谷さん「今日は皆さん一日、能勢ですか? 暖かい日で良かったですね。皆さん、菊炭はご存知ですか?」

「[能勢さとやま創造館]のHPは拝見しましたが、実物を見るのは初めてです」

小谷さん「ではまずはギャラリーをご覧頂きつつ、『能勢菊炭』の歴史や用途についてお話しましょう」

[能勢さとやま創造館]のギャラリーに入ると、長さや太さがいろいろの炭が置かれていて、香ばしい炭の匂いがしました。能勢菊炭は『池田炭』とも呼ばれ、1570年代には、かの千利休が好んで使っていたという伝統のある炭。今も主に茶の湯の高級炭として京都の茶道家元などで用いられています。もともと江戸時代には、物資の集積地が池田にあり、ここから全国に販売されていたことから『池田炭』と呼ばれていました。

菊炭のシンボルである断面の菊の模様は、クヌギが一番キレイに出やすく、また火力が強いので、地元の能勢産のクヌギだけを使います。

  • お父様の安義さんと義隆さん親子2代続けて、(社)国土緑化推進機構から『森の名手・名人』として認定されていらっしゃいます。
  • これが『能勢菊炭』。炭の断面が菊の花のような模様をしていることから『菊炭』と名付けられたそうです。

お茶の世界で良いと言われる炭の条件としては、
・皮が薄くて密着していて、握っても剥がれない
・中心から菊の模様が放射線状に広がっていて、模様が細かい
・切り口が真円に近い
・皮肌がサラッとした"柳肌"のようなもの ...など

こうした条件の炭を作るには、『寒焼き』と呼ばれる冬場12月から5月が良いとされ、木の伐採も11月末から3月頃の、木が水を吸い上げない期間に限定されます。

小谷さん「炭焼きは今、環境面で注目されています。クヌギは広葉樹なので伐採しても元株が残っていれば何度でもまた生えてきます。このように人為的に植えられたクヌギを『台場クヌギ』と言います。炭の生産のために毎年大量のクヌギを切りますが、決して里山を荒らしている訳ではないのです。つまり炭焼きは循環型の仕事だと言えます」

「知りませんでした。じゃあローテーションで毎年違う場所のクヌギを切るんですか?」

小谷さん「そうです。だいたい7年周期で、そのクヌギの林を管理している家から買うんです。

  • 長さも太さも様々な『能勢菊炭』。茶の湯からバーベキューまで、様々な用途に用いられています。
  • オブジェとして、インテリアとして、ギャラリーに展示されていた一品。伝統産業であり、工芸品であり、アートです。

だから7ヶ所の里山があればいいはずだったんですが、ここ2年ほど続けて鹿がクヌギの新芽を食べてしまったので、そのサイクルが崩れてきていて困っています」

「菊炭は茶の湯用以外にも使えるんですか?」

小谷さん「もちろんいわゆる黒炭ですから、火鉢やバーベキューなどにも使えますよ。焼ける炭が全てが美しい菊炭になるとは限りませんから。あと、炭の特性を利用して『能勢菊炭』というブランドとして炭以外の商品も開発しています」

例えば木炭にはその塊の中に縦横に孔が無数にあり、その孔の表面積をつなぎ合わせると、炭1gでなんとテニスコート1面分もあると言われています。その分吸着力があり、通気性や保水性、透水性に優れています。消臭、湿度調整のほか、土の中から吸い上げる天然ミネラル、遠赤外線、マイナスイオンなどその効果は様々。小谷さんはそこに着目し、能勢菊炭ブランドの製品として、石けんやせんべいなどの食品も展開しています。

小谷さん「大きな言い方になりますが、この菊炭は日本で生まれた大切なもので、日本の中のほんの一部だけれどこれがあるから日本なのかもしれない、って思うんです。だからもっと多くの人に知ってもらいたくて商標登録もしました。誇りを持ってきっちりした物を作るためにも」

  • 炭焼きされて菊炭にされるクヌギの原木。11月末~3月頃に85~90cmの長さで伐採される。
  • クヌギの原木の断面。これが炭焼きされると菊の花のような断面になる。

「この箱に入った茶の湯の菊炭のセットも、すごくきれいで素敵です。お茶をやっていないけど欲しい...」

「炭の効果はテレビなどでもいろいろ紹介されてますけど、いろんな可能性があるんですよね」

「炭焼き職人としてだけじゃなく、商品企画やデザインまで1人でされている小谷さんはスゴイ!」

そして実際に窯に行って、炭焼きの工程を説明してもらいました。こちらの菊炭を作る『池田窯』は全国的にも珍しい鎌倉型。また、窯に天井がないのも特徴の1つです。

里山で85〜90cmに伐採したクヌギを窯の中に立てていき、空いた空間に小枝を束ねた柴(揚げ柴)をぎっしり詰めていきます。そして窯の口で一昼夜ほど掛けて火を焚くと、中の炭材が自然と炭化する温度に達するので、そうなると後は窯の口の通気孔で酸素を調節するだけ。煙突はなく、地べたに孔がポコッと開いているだけで、そこから煙がポコポコと出てきます。その煙が最初は真っ白ですが、やがて青くなり、紫になり、最終的に透明になったら煙突も塞いで完全に密閉します。4日間ほど冷ました後、ようやく窯出し作業です。

「だいたい窯の火入れから何日後に窯出しするんですか?」

  • 炭はじっくりと長時間かけて温め続けてくれるので、燃費がとても良く、環境にやさしい燃料です。
  • 茶の湯用に箱詰めされた『能勢菊炭』の高級セット。茶道の名門の家元さんたちに愛用されているそうです。

小谷さん 「10日ぐらいですね。この10日サイクルを一冬中繰り返しやる訳です。今は火入れが終わったところ。煙がまだ白いでしょう」

「これが紫とか透明になるんですね。不思議」

「炭焼きの工程で最も難しいところっていつですか?」

小谷さん「着火後、炭化する温度に達して、窯の口の孔を小さく絞る時かな。タイミングが早すぎると消えてしまうし、そこは経験値。同じく密閉する窯止めのタイミングも煙の臭いや温度を見ながら判断します。木の成分が抜けきっていないと、未炭化になってしまうので気を遣いますね」

「難しそう! やっぱり職人技ですね」

小谷さん「料理でもおいしく炊くためのタイミングがあるでしょう。炭の焼き方も操作があるんです。でも全く同じ条件ではないので、毎回試行錯誤です。自分の炭を作るために、これは一生そうだと思います」

最後にクヌギの原木を調達している里山の現場を見学しに行きました。思った以上に斜面も急で、雪もちらほら残っています。切ったクヌギの枝をナタで切り、柴を作っていきます。ただ木をまとめて結べばいいものではなく、中にはツルが食い込んだ木もあったり、片手で持った時にばらけないように長さと分量をそろえて縛らなければなりません。

  • 菊炭を作る『池田窯』は全国的にも珍しい鎌倉型の窯で、窯に天井がない。
  • 炭焼き作業の様子。伐採したクヌギの木を窯の中に立てていき、空いたところに小枝を束ねた柴をぎっしりと詰めて、一昼夜掛けて火を焚きます。

ベテランの北山さんを中心に、山の作業は4人でされていました。

小谷さん「この台場クヌギの里山は、炭焼きに無くてはならないもので、里山そのものも今注目されてますよね。里山の一番の特徴は生物の多様性。人の手が入った林の方が、自然の森よりも生き物が住みやすくなっているんです。実際、能勢の里山には、森の妖精と呼ばれるシジミチョウ、ギフチョウ、ハッチョウトンボなどの昆虫や、植物ではトキ草、サギ草、モウセンゴケなど、いろんな生物が生息しています。能勢はフィールド自体が1つの財産です」

福田さん「私も小さな時は当たり前に過ごしてきたけど、大人になってみて能勢のいろんな素晴らしいところが見えてきたような気がします。四季の移ろいがはっきり分かるんですよね」

小谷さん「ほんとに。冬の寒さがあるから春がうれしい。春になるとみんなウキウキしてますよ、能勢の人(笑)。5月の緑といったらキツイぐらい濃いし、6月になるとそれが今度は澄んだ緑になって、カエルの合唱がうるさい...」

福田さん「そうそう。だから俳句を詠みたくなるんです」

また能勢は、大阪市内や阪神間から1時間ほどで来られるというのも1つの財産。

  • 窯から立ち上る煙が、白煙から青くなり、紫になり、やがて透明になれば、煙突をふさいで密閉します。
  • クヌギを伐採した後の里山。こうし伐採をすれば、またクヌギが育って、7年に1度伐採できる。

クヌギの原木の伐採をされている皆さんと小谷さん。先祖代々この地に伝わる伝統産業である『能勢菊炭』を、いかに次の世代に受け継いでいくか、きちんと考えていらっしゃいます。

確かに街中にくらしていると、季節の変化を感じる要素がほとんど思い当たりません。日本の魅力でもある四季の移ろいを、しっかりと五感で感じることができる能勢の環境が羨ましく思えました。

ここでも、福田さんが1句。

菊炭の 燃ゆる音と香を 持ち帰る
(きくすみの もゆるねとかを もちかえる)
季語「炭」

能勢さとやま創造館
大阪府豊能郡能勢町下田尻301
TEL/072-737-1902(問い合わせ受付時間/9:00〜17:00)
http://kikusumi.com
http://www.satoyama-co.jp

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