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grafが近畿2府4県を旅して考えるきれいなくらし

11.02.23

Chapter.1 地下から汲み上げる水と国産大豆で作る、おいしい手づくり豆腐。

今年初めての取材は、寒さが厳しい1月のある日。朝8時に大阪市内からクルマで出発すると、高速もそれほど混んでいなかったので、40分ほどで能勢に到着。grafのメンバーにとって能勢は、ミーツ畑も近くて身近な場所。しかし今回初めて能勢を訪れるメンバーもいたり、今まではあまり能勢のことを知らなかったりで、今回の取材はみんなとても楽しみにしていました。
今回、ナビゲーター役をお願いした、能勢で暮らしながらこの地の季節の移りかわりの魅力を紹介している『四季の企画室 野の』を主催するエディター&ライターの福田アイさんとは能勢町内の[岐尼神社]付近で待ち合わせです。

「アイさん、お久しぶりです。今回は案内役をお引き受け頂いてありがとうございます。今日は楽しみにしてきました」

福田さん「おはようございます。よろしくお願いします。今日は天気も良くて暖かくて良かったです。じゃあまずは、長谷の棚田を見に行きますか?」

まずはじめに、能勢らしい景色が楽しめる場所やアイさんの日課の散歩コースを案内してもらうことに。三草山の麓に位置する長谷の棚田は『日本の棚田百選』にも選出されている場所で、地の石を積んだ上に粘土質の土を盛って田んぼにしているそう。冬の間もきちんと整備されていて、付近には茅葺き屋根の家も残っています。

『日本の棚田百景』にも数えられている長谷の棚田。三草山の麓のなだらかな斜面に沿って、いくつもの棚田が拡がるのが見渡せます。

福田さん「この長谷地区は、山の水を利用するのに、井戸が横から引かれていて、さらにガマと呼ばれる珍しい給排水溝があります。この2つの水路を利用することで棚田に水を供給されています」

「夏はまた全然景色が違うんでしょうね」

「遠くまで見渡せてすごくきれいな里山ですね。茅葺き屋根の家が風景にすごく馴染んでいますよね」

福田さん「長谷地区には茅葺きの家が3軒残っているんです」

「あの三草山にはバイクで走ると気持ち良い大好きな林道のコースがあって、僕、実はよく来るんです」

福田さん「へー、そうなんですか! 私たちは小学校の頃はいろんな山に登っていました。三草山にも登りましたけど、そんなバイクのコースもあるんですね」

「林道なんで、道無き道みたいなもんですけどね」

その後、福田さんのお父さんの畑を少し見せてもらいました。小学校の裏にあって、愛さんの散歩コースでもあるので、いつもちゃんと育っているかをチェックしながら歩いているんだとか。白菜やほうれん草、大根などが植えられていて、だいたい通年で作る野菜は決まっているそうです。

  • 地の石を積んだ上に粘土質の土を盛って、棚田が作られている。
  • 棚田のある長谷地区には、こうした茅葺き屋根の家が今も残っています。今はこの辺りに3軒を残すのみだそうです。

豆腐を作っている厨房が店舗も兼ねていて、お客さんが来たら、その注文の分だけ水の中から豆腐を手で掬い、販売するという昔ながらのスタイル。販売しているのは木綿豆腐(120円)と厚揚げ、薄揚げ(各60円)の3品のみ。その人気の秘密は、昔ながらのシンプルな材料と工程から生まれる手作りの豆腐ならではの味。材料は国産大豆と岡山から仕入れるにがり用の天然塩、そして地下30mから汲み上げる地下水のみ。地元のみならず、遠方からもわざわざ買いに来る人も少なくない人気のお店なんです。そのおいしさの秘密を知りたくて、本当は定休日だったところを、特別に豆腐作りの体験をさせてもらいました。

福田さん「堂本さん、おはようございます。今日はお休みだったのにすみません。よろしくお願いします」

堂本さん「おはようございます。今日はせっかくやし、大豆を挽くところからやってもらおうと思って準備していました。何しろ狭い厨房なので皆さんに少しずついろんな工程をやってもらいましょうか」

「大人数ですいません、よろしくお願いします!」

まずは、前夜から12時間ほどかけてふやかした大豆を地下水を入れながら挽きます。ドロドロとした白い液状になった大豆は見た目はおいしそうですが、ただ豆をすっただけの状態なので、なめてみましたが、生臭くておいしくありませんでした。それを圧力釜に入れて炊きます。

  • 棚田を散策していて出合った、見事に積み上げられた石垣。昔の職人さんの仕事の丁寧さと技巧に、時を経て感心させられます。
  • 前日の夜から半日かけてふやかした国産大豆に、地下30mから汲み上げる地下水を注ぎ入れます。

圧力釜がなかった時代は大きな釜で時間を掛けて湯がいていたそうです。

今は圧力釜でわずか10分ほどで加熱が終了。

次にこのアツアツの液状の大豆を布で濾過し、さらに布に溜まったものをもう一度濾過して、重りを乗せて搾り出していきます。ここでできるのが豆乳とおから。できたての豆乳を飲ませてもらいました。

「あれ? 意外とあっさりしていますね。飲みやすい」

「ほんとだ。それに色も生成りじゃなくて白い」

堂本さん「市販の豆乳は多分わざとああいう大豆の味にしてあるんだと思います。この作り方でできる豆乳は絶対にあんな味にはなりません」

ちなみに豆腐の絹ごしと木綿は、濾過する時に使う布の違いだと思っている人が多いと思いますが、絹ごしは絹を使うからなめらかなのではなく、豆乳に凝固剤を混ぜてそのままゲル状に固めたもので、作り方から異なります。

堂本さん「戦時中は『健民豆腐』といって、配給の豆の量が少なく、それをふやかして食べるために考案された豆腐がありました。つまり絹ごし"風"の豆腐です。

  • ドロドロとした白い液状になった大豆の汁。この状態ではまだ、生臭いだけでおいしくはありません。
  • 圧力釜で加熱した大豆の汁を布で濾過します。

もちろん今の豆腐と比べると水っぽくておいしいものではありませんでしたけど。今はうちは木綿豆腐だけしか作っていませんが、それを作る容器だけは今も残っています」

「へー。本当に絹を使っているんだと思っていました」

そして豆乳が温かいうちに天然のにがりを入れ、かき混ぜると自然と固まっていきます。しかし、ただ入れて混ぜればいいというものではありません。

堂本さん「このやり方で豆腐の味や固さが決まるんで、一番難しいところです。やってみてください」

「緊張するなぁ。豆腐は作ったことはあるけれど、こんなに多い量は初めてです」

堂本さん「そうなんですか。私は逆に量が少ないと、上手く作れないと思います」

大きなしゃもじのような物を使って、カップ1杯弱のにがりを少しずつしゃもじに落とし、しゃもじを上下に振りながらまんべんなく豆乳にポタポタポタと落としていきます。それをゆっくりと混ぜ、5分ぐらいおいてからまた同じようににがりを入れて混ぜて...、を繰り返します。

  • できたての真っ白い豆乳。あっさりしていて飲みやすいです。
  • これが布で濾過して残った、できたてのおから。

堂本さん「このにがりの打ち方の違いや、まぜる早さ、気温などによって微妙に豆腐の味も変わるんです」

「にがりは"打つ"って言うんですね。一気に入れないからそう表現するんでしょうね」

「にがりを一気に入れちゃうとどんな豆腐になるんですか?」

堂本さん「固い豆腐になってしまいます。粘りを出すために数回に分けて打つんです。お客さんは敏感で、味の違いを指摘されることもあるんですよ」

「そんなに変わるもんなんですね。でもやってみて分かりました、まさに職人技!」

固まってきたらあらかじめ布を敷いた型に流し込みます(布の敷き方も実は難しい)。そうして重石を乗せてしっかり水分を出します。水分が抜けていないと、ツルッとした豆腐の舌触りになりません。

  • こうしてしゃもじでにがりを打って、豆乳にまんべんなく振りかけていきます。このにがりの打ち方で、豆腐の味や堅さが決まるそうです。
  • にがりを打った後は、こうしてしゃもじでゆっくりと慎重にかき混ぜます。この混ぜ方によっても、豆腐の味が変わってくるそうです。

にがりを打ってかき混ぜていくと、こうして徐々に固まってきます。

固まった豆乳を、こうして布を敷き詰めた型の中にゆっくりと流し込んでいきます。
型一杯に流し込んだら、布で覆います。
布で覆った上から木の蓋をして、重石を乗せて、しっかりと水分を切ります。

最後に水の中でそ〜っと型から出して、包丁を引っ張るように斜めに傾けながら切ります(これもまた切りにくい)。1型で15丁、一度に2型分作るので1回の工程で30丁。通常は1日に10工程、早朝から約12時間働き続きです。

充分に水分を切ったら、水に中でそ~っと型から取り出します。
ちゃんときれいな木綿豆腐が出来上がりました。
出来上がったばかりの豆腐を包丁で切り分けます。これもなかなか難しい。

堂本さん「さ、早く食べてみて下さい。豆腐はできたてが一番おいしいんですよ」

贅沢に1人1丁ずつ、シンプルに出汁醤油だけでいただきます。

「うわーっ、めちゃめちゃおいしい!」

「手作りの味やー」

「食感も固すぎず柔らかすぎず、フワフワやけど口溶けも良い...」

堂本さん「にがりも塩から作る天然なので、コクもでるんですよ」

「大豆の主張が強すぎないから、何丁でも食べられそう。調理してもおいしいやろな」

「これが毎日でも食べられる能勢に住んでいる福田さんがうらやましい...」

福田さん「能勢の小学校では、確か給食にも堂本さんの豆腐が出されるんですよね。私は昔から食べていますが、できたては初めて食べました。すごくおいしかったです」

当日は定休日だったにも関わらず、取材している時も続々とお客さんが訪れていました。そんな急なお客さんにもにこやかに応対する堂本さん親子。接客も製造も、まさに阿吽の呼吸といえるコンビネーションはさすが親子です。豆腐作りを細かく親切に教えてくれた博之さん、戦時中のエピソードなどもいろいろ話してくれた佐市さんに、もっともっと豆腐の話を聞いてみたいと思いました。

去り際に、福田さんが1句、詠んでくれました。

豆腐掬ふ 悴める手の 武骨かな
(とうふすくう じかめるての ぶこつかな)
季語「悴める」

  • できたての豆腐に出汁醤油をかけて。この独特な風味のする出汁醤油もお客さんの間で評判になって、取り寄せて販売するようになったそうです。
  • フワフワで口溶けも良く、大豆の旨味が凝縮されたコクのある豆腐の味わいに、みんな笑顔が広がります。

堂本豆腐店
大阪府豊能郡能勢町大里388
TEL/072-734-1203
営業時間/7:00〜17:00(売り切れ次第終了)
月曜休

中央左がお父さんの佐市さん。右が博之さん。呼吸もぴったりの豆腐職人のお2人。お休みのところをありがとうございました。

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