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grafが近畿2府4県を旅して考えるきれいなくらし

10.11.17

Chapter.3 淡路ならではの夢とロマンにあふれる現代美術作家、尾崎泰弘さん。

最後に向かったのは、現代美術作家・尾崎泰弘さんの奥様が経営する[カフェ ナフシャ]。海がすぐ近くにある淡路らしいロケーションです。尾崎さんは『国生み神話芸術祭』に招待作家として、そして審査員として参加しており、神話劇の小道具の制作なども担当されました。カフェの1階には尾崎さんのアトリエも兼ねる[発明工房]もあり、周辺には大小様々な大きさの作品が点在しています。到着して早速、作品をいくつか案内してもらいました。
まず駐車場では先が尖った円錐の建物と恐竜のオブジェがお出迎え。

尾崎さん「この建物は、現在は地面に接している部分が以前は広い開口部として空に向いた、宇宙と対話する装置でした。今はそれをひっくり返して地球と対話する装置になっています。それで、現在はなぜかトイレになっています... 」

「わ〜。ほんまや。自分の声がめっちゃ響いてる」

尾崎さん「こっちの建物は、6年前に、淡路の島内のいろんな場所を片付けて見られるようにしていこうという『空き家リノベーションプロジェクト』という企画があって、その時に片付けました。前田くんにお手伝いしてもらいました。もともとは機械技師さんに貸していた場所で、その方がお歳になられて置き去りにされていたんです。そこを30年ぐらい経ってこういう状態にしました」。

  • 空き家だった建物を改装して、1階はアトリエに、2階はギャラリー&カフェにされています。
  • この球形のパオのようなのがトイレ。入って真ん中に立つと音が反響する。「地球と対話しながら用を足す」壮大です...。

ガラガラと大きな鉄の引き戸を開けると、大きな錆びた機械がいくつか置かれていて、壁にもどこかで見たようないろいろな道具や物が飾ってあります。壁や天井には所々小さな穴が空いていて、そこからこぼれてくる光が小さなミラーボールに反射して、キラキラとプラネタリウムのような光を放っています。尾崎さんは「昼間しか見えない星」と呼んでいました。

尾崎さん「片付けているうちに錆びフェチになっちゃって(笑)今でも錆びている物を見つけては、どこにピタッと合うかなって考えています」

  • 木で作られた恐竜は、丹波龍の子どもとで「リュウタン」。ニュージーランドから輸入されるカボチャが入っていた木箱で作ったそうです。
  • 発明工房の中。大きな錆びた機械や謎めいた装置があちことに。壁や天井の穴から差し込む光が星となってキラキラと輝いています。
これはハネの付いたヘリコプターのようなオブジェ
アニメに出てくる潜水艦のようなオブジェ。
スタジオジブリのアニメ映画に出てきそうなオブジェ。『風の谷のナウシカ』か? 童心に戻ります。

「『国生み神話芸術祭』ではどんな作品を出品していたんですか?」

尾崎さん「『異次元飛行装置』というもので、これは同時期に開催されていた『BIWAKOビエンナーレ』にも同じ作品を出品していました。淡路と琵琶湖の形が似ているとか、そういうことを考えながら何か2つを結びつけたいと思って。それによって新しいエネルギーが生まれるんじゃないか、というコンセプトで両方に設置しました」

  • 尾崎さんの作品「Blowin' in the Wind 01.3」。まさにスタジオ・ジブリのアニメの世界そのものです。
  • こちらは『ARK-PROJECT 1035』。いまにも宇宙人が出てきそうな...。

「へー。それはどんな形でどこに?」

尾崎さん「賀茂神社の神様が祀ってある鳥居を隔てた前に。神様からみると異次元飛行装置が神かな、ってそんな場所においていました。神様と対話している場所。琵琶湖の方は瓦常工場の中に設置しました。当所、考えていた場所にご神体があったので無理と言われて、そこにやむをえず...」

「琵琶湖と淡路島ってほんと形が似てますもんね」

尾崎さん「そう、その関係を考えたいと。神話の世界では、日本列島が母体で琵琶湖が子宮、そこから淡路島が産み落とされたとも言われています。それに琵琶湖で展示したのが瓦常工場ですけど、偶然ですがそこも淡路と同じ、瓦の産地なんです。地質が似ているのかも」

「ほんまや。やっぱり偶然とは思えない」

尾崎さん「実はこの場所も、伊勢神宮から伊弉諾神宮(いざなぎじんぐう)を繋ぐ道になっているんです。"太陽の道"のライン上的な発想です。僕はそういうのがすごく好きで、それに太陽が好きで、太陽と共に生きるっていうのを意識しています。だから朝が早いです」

「日の出と共に起床ですか?」

  • 1階のギャラリーの様子。左に見えるのはUFOみたいな木のオブジェは「異次元飛行装置」。ヘルメットをかぶって中に入ってコントロールユニット(アフリカの親指ピアノ)で音を鳴らします。
  • 『異次元飛行装置』の構造はこんなふうになっています。中央にいるのは、制作中の尾崎さん。

尾崎さん「いや、日の出前に起きて、太陽を浴びて、浴びることによって気の調整をして1日が始まる、という流れです。僕にとっては朝が最も神聖な時間なんです」

そして、カフェの1階にあった異次元飛行装置に実際に乗せてもらったり、神話劇で使った道具などを見せてもらった後、2階のカフェへ。ここでは定期的にライブも行われており、入り口には大きな風車がありました。

池島さん「これは前の[ナフシャ]にあったものですか?」

尾崎さん「いや、それはもう少し小さいやつでカフェの中にあります。あ、コレ見て思い出しました?」

[ナフシャ]は2006年まで神戸の新開地にあったオーガニックカフェ。講演会やライブもあったり、芸術家のたまり場のような、神戸界隈ではちょっと伝説的な存在のカフェでした。その時は尾崎さんが経営していたわけではありませんが、お店の家具などを尾崎さんが制作していたので、閉店と共に引き上げることになり、当時のオーナーの了承を得て、名前も引き継いでカフェをすることにしたんだそうです。今は尾崎さんの奥様が切り盛りしています。この日はカフェで料理教室があるということで、尾崎さんの家に移動して、晩ごはんを頂くことになりました。気候も良く、お庭で食べることに。

  • 2階のギャラリースペース。夜になると幻想的な雰囲気で、どこか違う国に来たみたいな気になります。
  • 2階のカフェスペース[カフェ ナフシャ]。奥のキッチンで調理されているのは尾崎さんの奥様です。

メニューは尾崎さんの奥様お手製のシーフードカレーとひよこ豆のスープ。ペロリと完食した後、野外活動家の二名良日(ふたなよしひ)さんと一緒に作ったというツリーハウスを見に行きました。

「これは子供が大喜びでしょう! 作るのに何日ぐらい掛かりました?」

尾崎さん「骨組みとなる竹を集めるのに、相当時間が掛かって。山から竹を切り下ろして、冬の間延々と切っていて、その年の春、花見をここでしようって言ってたけど完成しなかった」

「桜の木ですよね。花見最高じゃないですか!」

尾崎さん「3本の木に跨って括り付けていて、船のような形にしています。この船が地球を回転させてるんかな、って想像しながら造っていました」

「尾崎さんが作品を作る時ってイメージが先ですか?」

尾崎さん「先にイメージですね。自然とかその場所を見ていて浮かんでくるイメージで、プツンと割り切れた時に動き始めてしまう、そんな感じ。そのことばっかり考えていたら、なんか抜ける時ってありますよね。今回の『国生み神話芸術祭』は、『BIWAKOビエンナーレ』と重なってたからバタバタやったなー。劇の小道具も、1週間前から作り始めて当日まで作ってた」

「そうでしたね。アートはまとめ役として茨木の[カフェ百花]の河上さんと僕がやりました。良い感じの芸術祭になりましたよね?」

  • 尾崎さんのお家の庭でカレーパーティーです。焚き火を燃やしながらのお話しは、様々に拡がりました。幻想的な夜でした。
  • 尾崎さんの奥様のお手製のシーフードカレーとひよこ豆のスープ。スパイスが効いていて美味しかったです。

尾崎さん「舞台も前日までどないなるかなって感じやったけど、その日になったらできとったもんね。あれが不思議やね。初回やから仕方ないけど、予算がないのがネックやった。みんなボランティアやし。でも予算がないって言っても、それでも出たいっていう人が結構いて。スピリチュアルなテーマに興味がある人とか、神社に奉納する形でやりたいっていう人が集まって来たのかな」

尾崎さんが野外活動家の二名良日さんと作ったツリーハウスの上。春にはサクラが満開で、ここでのお花見は格別だそうです。羨ましい!

「そんな予算がない中でも、すごい内容になりましたもんね。人も結構来たんですよ、劇だけで2日間で500人も」

「来年もやるんですか?」

尾崎さん「それはまだ分からないね」

「でも今回で実績ができたから、予算面で賛同してくれる人が出てきそうかな。やって欲しいですけどね」

ツリーハウスの上は風もなく、寝てしまいそうな快適さで、いつの間にか時間が流れていきました。淡路出身で淡路でくらし、創作活動を続ける尾崎さん。作品にはどれも夢とロマンあふれるテーマがありました。お話を聞いていると、そのくらしぶりも作品も、淡路という場所が大きく影響しているのが分かります。「多分、今日会われた方はみんな、淡路のことが好きやと思う。僕も結構好き」という尾崎さんの言葉が印象的でした。

カフェ ナフシャ

淡路市生穂1604 発明工房内 2F
TEL/0799-64-1121
営業時間/11:00~19:00
水・土曜休
ランチは前日の午前中までに要予約
http://nafsha.geo.jp




grafからのメッセージ


この連載ではこれで2度目の淡路島取材。
「淡路島をきちんと訪問するのは、今回が初めて」
「『国生み神話芸術祭』も興味深く、以前からずっと行きたかった」
というメンバーもいて、訪れる前から期待に満ちていました。

淡路島の中を車で移動していると、山道をぐんぐん走っていたかと思えば海岸線を風をきって走っていたり、はたまた田園風景の続くのどかな風景にほっとしてみたり...。また、島から眺める対岸の本州と四国の海岸線は、日本というスケールをこれまでとは違う縮尺で私たちに見せつけてくれました。そんな淡路ならではの景色を横目に、これから出会う人たちのことを想像しながら過ごす移動時間。それは、今までに味わったことのない感覚。分刻みの都市生活者である私たちから見た淡路島は、日時計のごとく、おおらかな時間の流れを生きているようにすら感じました。

最初に訪れた[鶴来窯]の前田さんの話は、陶芸の原点に迫るもので、非常に興味深いものでした。

「桃山時代の焼き方を可能なかぎり再現するということに、どこまでも熱心に取り組まれていて、その様子は過去を再現しているはずなのに、創造するという行為の最先端をいっているような、そんな印象を受けました」

「高度情報社会のこの時代には、前田さんのスタイルは少し遠くも思えましたが、かつての文化を今の時代に伝えていくことやその考え方には共感する部分がありました」

「私はお茶が好きですが、まだまだ日本の文化としての茶道や茶の歴史など知らなくて、前田さんのお話しをお聞きしていると、焼きものの話からお茶の話に繋がって、思わぬ勉強になりました。師匠が亡くなられた今でも、その遺志を継ぎ、古伊賀の伝統を守り続けている前田さん、素晴らしいですね! 文化を守っていく、引き継いでいく責任は相当覚悟がいると思いますが、そんなことを感じさせないような、とっても気さくな方でした」

次に訪れた[楽久登窯]の西村さんの工房と、今年完成したばかりのギャラリー&カフェは、今後、淡路の若手作家や料理人にも大きな影響を与えそうな空間でした。

「人との関わりで、楽しいことができないかを常に考えておられるのが印象的でした。是非一緒に、淡路島で食のイベントを企画してみたいです」

「これからますますいろんな方々との出会いから、楽しい事が生まれそうな気がしました。料理もおいしく、実際に西村さんの器をいろいろ使えるのが楽しく、贅沢なランチでした」

「2人の陶芸家は全く違った性格と方向性なのにも関わらず、時には協力し合って淡路を盛り上げようしている姿に大変、感銘を受けました」

[パソナチャレンジファーム]は、様々な支援を受けつつ、淡路島で自分に合った農業のスタイルをつくる、という新しい農業のカタチ。

「アスパラ農家の塩道さんは、女性が続けやすいよう軽い作物で、また長く続けていけるように多年草のアスパラを選んだというところに感心しました。畑は自分の子供を育てるように毎日見なくてはいけません。無理が生じては途中で断念してしまいます。ミーツファームも自分達にあった方法や、継続していくための方法をもう一度考えなくてはと思いました」

「青木さんのバジル、とても清涼感があり香りが良かったです。お話を伺って、大阪への販路を探しておられるようだったので、またgrafが企画するマルシェなどで繋がりができたらいいなと心から思っています」

そして伝説のカフェを淡路で復活させ、淡路在住の現代美術作家として活動を続ける尾崎さん。

「いろんなものが尾崎さんの夢とロマンで満ち溢れていました。『太陽と共に生きている』という言葉が印象に残っています」

「若手の活動を支えながら面白い作品を作り、地元の中学校の美術の先生もしていて、僕も子供の頃にこんな先生に習いたかったなと羨ましく思ってしまいました」

「あのツリーハウスの上で、ゆっくりと先生とお話したら未来が明るくなりそう。桜が満開の時、お酒を飲みながら話をする機会をぜひ作りたいです」

「自由な発想から生まれる独特の作品は、全て淡路に繋がっているんだと感じました」

今回のナビゲーターである堀田さんが『国生み神話芸術祭』で今年、淡路に度々訪れ、様々な人達と知り合った中で、最も気になったのは『土』というキーワードでした。今回の芸術祭のテーマとなった『国生み神話』に出てくる伊弉諾尊(いざなぎ)と伊弉冉尊(いざなみ)は、土と火のことで、この淡路島ならではの生まれるべくして生まれた神話なのかもしれません。

淡路は日本古代から神や朝廷に食物を納めていたとされる『御食国(みけつくに)』。今でもその食料自給率は300%近いと言われていて、農業、酪農がとても盛ん。新規就農先にこの土地を選んだ[パソナチャレンジファーム]の方々の未来は非常に明るく感じました。また、陶芸家お2人のお話では、瓦や陶芸に使える土が10種類以上採れることに驚きでした。そして生まれ育った淡路で太陽と共にくらし、土地に根付いた活動を続けている尾崎先生。先生に習う生徒は、きっともっと淡路が好きになるに違いないでしょう。

まだまだ紹介したい淡路在住の素敵な人は実はたくさんいて、今日訪ねた方たちはほんの一部。これからの淡路には大注目していますので、プライベートでもまた訪れたいです。

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