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  4. 第18回 京都・木津川 “アートと暮らす”田中恒子先生のお家を訪ねて。
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grafが近畿2府4県を旅して考えるきれいなくらし

10.10.20

Chapter.1 人を迎えるおもてなしの心と住みやすさの工夫が溢れる、恒子先生の「オープンな家」。

京都府の最南端に位置する木津川市。2007年に相楽郡の山城町、木津町、加茂町の3つの町が合併して発足し、市名にもなっている木津川が真ん中付近を流れています。すぐ南は奈良市で、ちょうど府と県の境目に当時の日本住宅公団が造成した平城ニュータウンと相楽ニュータウンという2つのニュータウンがあり、京阪神屈指のベッドタウンとして'70年代から発展してきました。

朝11時に大阪・中之島のgrafビルを出発して、奈良市経由で木津川市に向かいました。今回は、恒子先生がお昼ご飯を用意して迎えて下さるということで、みんなお腹を空かせて向かいます。奈良市内は平城遷都1300年祭の真っ只中で、あちこちで幟を目にしました。奈良市内を抜けるとやがて景色はよりのどかになり、田んぼと隣合わせに住宅街、という独特の風景に変わります。恒子先生のご自宅は、平城ニュータウンも徒歩圏内。住宅地の細い道路を入っていった突き当たりにありました。

「こんにちは、恒子先生。今日はお世話になります。みんな腹ぺこで来ました!」

田中恒子先生「大きなクルマで来たんやね。さてみなさん、うちには門扉がないのがおかしいな、と思いませんか?」

全員がクルマから降りると、挨拶もままならないうちに、早速先生の"お家紹介"がスタート。

  • お家の表には、恒子先生がご家族のお名前を手書きされた陶板の表札付きの大きな郵便ポストが。タヌキの置き物は卒業生たちからの贈りもの。
  • お会いしてスグに、お家の前で恒子先生の楽しいお話しが始まりました。親しみやすい笑顔が素敵な方です。

恒子先生「門扉があると、ここからが私有財産よっていう感じになるでしょ。それがちょっと嫌で。私は『みんなにオープン、住まいを開く』というのが福祉の基礎と思っているので、『誰でもいらっしゃいの家』っていうのが私の家の思想。だから私は今日みたいにみんなが来てくださるのが大好きなんです!」

「私たちも楽しみにして来ました」
「先生、これがトークショーの時におっしゃっていたポストですね」

恒子先生「そう、言ってたかな。この郵便ポストがなぜ大きいかというと、みかんの箱とか大きな宅配便の荷物が入るように大きくしたんです。でも私は家の鍵を忘れた時、よくこの中に入って座っているのよ。ポストの中は電気が付くので、本を読んで待っています」

一同(笑)

「だから僕、インターフォンを押す時に中に先生がいないか、ちょっと見ましたもん(笑)」

恒子先生「そしてほら、玄関のところに不思議な物体があるでしょう」

「白いのですね。あれ近くで見るとかなり大きいでしょうね」

  • 先生の楽しいお話しに、初めてお会いするスタッフも自然と笑顔になりました。
  • 郵便ポストのインターホンの上には「田中恒子美術館」の表札が。かつて恒子先生のご自宅は、収集したコレクションで溢れかえっていたそう。

恒子先生「あれは國府 理(こくふおさむ)君の『パラボリック・ガーデン』という作品。パラボラアンテナを空に向けてあって、脚はゴルフ場で使うカート。今年の『アートフェア東京2010』で一番人気だった作品です。毎日小さなキノコが生えるんですが、今日はご機嫌斜めなのか1本も生えてない...。私の夫はそのキノコを毎日デジカメで撮影するのが日課で、東京で息子と会った時にその写真を見せてるわ。厳密にはあの作品は息子のコレクションなので」

こんな調子で私たちはいきなり恒子先生の生徒になったような気分になり、あっという間に"恒子ワールド"に引き込まれていきました。他にも緩やかに下がっている美しい屋根瓦や、先生が書いた陶器の表札など、家の外から見た部分にも、住まいへのこだわりがいっぱい。次はお庭に案内してもらいます。

いろんな木が植えられた庭は一面緑で、真ん中にはバーベキューのためのレンガで作られたコンロが。この家を建てたお祝いに頂いたというメタセコイヤの樹は、大きく成長しすぎて、向かいの田んぼにまで根が伸びてしまったこともあるそう。そしてそんな緑の中に、ポツンと赤い三角錐を逆さにした物体が。

「先生、あれは作品ですよね?」

恒子先生 そう。彫刻家の植松奎二(うえまつけいじ)さんの作品。ご存知かと思いますが、私は昨年、コレクションを和歌山県立近代美術館に寄贈したのだけれど、あれと中庭にある作品2点だけは、父の相続遺産で植松さんに注文して作ってもらった作品だから残したんです。

  • 國府 理(こくふおさむ)さんの『パラボリック・ガーデン』。パラボラアンテナから生えている足は、ゴルフ場で使うカートを加工したもの。
  • 『パラボリック・ガーデン』に生えていたキノコ。ご主人が毎日、撮影されているそうです。

ここで問題。あの三角錐がなぜ石の上に立っているのか分かりますか?」

「えー、石の後ろに台があるとか?」

「三角錐に見えて実は平面とか...」

恒子先生「実は脚が付いているんです。石に穴が開けてあって差し込んであるんです。そして三角錐の上の2/3は空洞になっていてバランスを保っています。でも台風の時は一回だけひっくり返りました!」

そうしていよいよ家の中へ。玄関には展覧会のポスターが何枚か貼ってあります。恒子先生は、ポスターだけでなく、ギャラリーやアーティストから送られてきた展覧会の案内ハガキもコレクションとしてファイルしています。そのファイルを見ると、各ギャラリーの流れと歴史がひと目で分かるようになっています。

家の真ん中にガラス張りの中庭があり、その中庭を囲むように"ロ"の字に設計されていました。とても見通しが良い、という第一印象です。そしてガラスの引き戸を開けると広いリビングダイニングへ。先ほどの緑の庭が一望できる部屋は、窓際が一段ベンチのように高くなっていて、その下が収納スペースになっています。お客さんはベンチに座って自由にくつろげるし、息子さんが子どもの頃はこのベンチを机代わりにして宿題をしていたんだそう。

  • お家の庭は手入れが行き届いていて、草木の緑も生き生きと鮮やかです。
  • 庭の石の上にぽつんとそそり立つ赤い三角錐は、彫刻家の植松奎二(うえまつけいじ)さんの作品。

恒子先生「私が考えたこのベンチのアイデアは、その後いろんな家で使われたと聞いています。この家は今日みたいなことをするために建てた家なんです。みんなおいでーって! 玄関に立てばこの居間が見える、というのが設計思想。誰が来たのかこの部屋からでもすぐ分かるでしょ」

「確かに。わざわざ玄関まで行かなくてもいいし、例えば後から遅れて来た人でも賑わっている雰囲気が見えて、気負いしないかも」

恒子先生「それから居間に入る引き戸がガラス戸になっているのも私のこだわり。最初、建具屋さんが『ガラスにしたらぶつかって危ないから』と普通の合板で出来たフラッシュドアを持ってきてくれたんです。でも私はたとえガラスが割れるようなことがあっても、絶対ここは透明ガラスにしたかった。設計理念が崩れるから。結局、施工の人とトラブルになったのはここだけでしたね。ここまで私が頑張って主張を通したのは、家に来てくれたお客さんの視線がまず先に居間を見通すようにしたかったから。身体より先に、気持ちが居間に入るようにということ」

知り合いの建築家に頼んだこの家の設計は、結局7つ目の案が現実に。「一緒に集まって暮らすことが最も大事なことだった」と、居間の条件を最優先にした間取りです。

  • 玄関の壁には色んな美術館の展覧会のポスターが貼られています。
  • 玄関の靴箱の上にも大小様々なオブジェが。

人がたくさん集まってわいわい賑やかに語らう」という田中一家の生活様式は、木津川に引っ越ししてくる前からずっとそうだったそうで、京都の町家に住んでいた頃も、学生が毎日のようにご飯を食べに訪れていたんだとか。さらに遡ると、恒子先生は子どもの頃からお父様を慕ういろんな人が夜な夜なお家を訪れていたという環境で育ったので、いろんな人がお家を訪れるというのは先生にとっては当たり前のことだったそうです。だから、居心地が良いのも当然!? この居間には自然と来る人をくつろがせるような、不思議な空気がありました。

いよいよ次は、恒子先生が朝から腕をふるって用意して下さった、待望のお昼ご飯です。リビングの大きなテーブルに、ど?んと幾皿もの大皿が並びました。

この日のメニューは、鰻やエビなどが入ったちらし寿司、山芋とおくらのもずく和え、白和え、ミックスビーンズとかぼちゃのマヨネーズとヨーグルト和え、ハムとベビーリーフが入ったポテトサラダ、焼きナス、うるめ、トマトのオレンジ和え、こんにゃくと鶏肝の粒マスタード和え。そしてデザートにみかんと小豆の寒天寄せ。何とも豪華です!

恒子先生「若い人なのにお肉がなくてごめんね。私が献立を考えると、どうしても野菜が中心になってしまうんです。各自めいめいにお箸とお皿を自分で取って、大皿をまわしながら料理を取っていくのがうちのやり方」

「いえいえ、野菜大好きですからうれしいです」

  • 玄関から中庭の望んで。中庭にも植松奎二さんの三角錐の作品が置かれています。右の壁の絵は、恒子先生の作。
  • 窓際には庭で拾った松ぼっくりや木の実、瓜などが並べられています。

「いただきまーす」

「先生、すごいです。これ全部、お1人で作られたんですか?」

恒子先生「そう。いつもだいたいの献立を考えて、お客さんが来るまでに、できるところまで作るの。で、私もみんなと一緒に食べる」

「おいしい料理は体にスーッと入っていくなぁ」

恒子先生「ありがとう。どんどん食べてね」

「旦那様は家事をされるんですか?」

恒子先生「私は、男は家事ができなければ女に愛されない!という考え方なので、夫が私にプロポーズした時も、家事は2人でやりましょう、という条件で結婚したんです。だから夫はなんでもできますよ。料理も上手だし、私が死んでも何にも困らない(笑) 今は夫の持病の管理のため、炭水化物を取らないという食生活にしていますが、夫は食生活の管理も全て自分でしています」

「すごい。家事ができる男の人って理想的!」

「こんなトマトの食べ方初めてです。甘めの柑橘系ソースは何ですか?」

「この焼きナスの調理はどうしてらっしゃるんですか? タレもおいしいです」

  • 左上から、鰻やエビの入ったちらし寿司、山芋とおくらのもずく和え、トマトのオレンジ和え、白和え、こんにゃくと鶏肝の粒マスタード和え。

  • 鰻やエビをふんだんに入れた海鮮ちらし寿司。美味しすぎて、3杯おかわりしちゃいました。

恒子先生「トマトのソースは、粒みかんの皮を刻んで冷凍しておいたものと、グラニュー糖とレモンで作りました。残ったお汁もおいしいので誰か飲んでみて。それとナスは、IHグリルに"焼きナス"っていう調理メニューがあって、それで焼くとすごく簡単。タレはネギダレにお酒とポン酢を合わせたもの。実はうち、今年の6月にオール電化にしたんです。冬に石油ストーブの灯油を運ぶのが、夫も私も年々無理になって...。だから今年の夏、初めてクーラーを付けたの。そしたらこの猛暑でしょ。うちに来た人はサプライズや!って喜んでました(笑)」

  • こんな風に、いつもお客さんに用意するお料理のメニューをメモ書きされています。
  • おいしいお料理を前にみんな箸が進む進む。まずはお料理に舌鼓です。

川西さんがモロッコティーを淹れてくれました。

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