
10.07.28
次に大山崎山荘美術館からもほど近い、JR山崎駅の駅前にある[Relish(レリッシュ )]を訪ねました。こちらは料理研究家の森かおるさんが主宰する"食と暮らしのうるおい サロン"。台所周りの雑貨から食品、ウエアなども販売するショップの隣には、料理や織物 などの教室が開催されるスペースもあります。
小泉さんと森さんは、お互いのお子さんの保育園が同じだったことからかねてから交流 があり、[レリッシュ]のオープン当初から毎週水曜日に[ense]の野菜を販売しています 。また、[graf salon]で開催された、grafのオリジナル調理鉢『一二三(ひふみ)』を使 った料理教室にも森さんは講師として来て頂いたこともあり、小泉さんにとっても、grafに とっても、日頃からお世話になっているお店でもあります。
ちなみにそのgrafのオリジナル調理鉢『一二三(ひふみ)』はこの日のメンバー、松井 貴さんの デザインによる食器です。
森さんがこの[レリッシュ]をオープンしたのは2003年。一男の母として家事もこなし つつ、月の半分は自ら料理教室の講師も務めています。料理教室のテーマは「作ってうれし いおうちごはん」。旬の野菜をたっぷり使ったオリジナルのレシピと、毎日のごはん作りを 楽しくする工夫、そして安全な「食」へのアプローチを提案しています。他にも[レリッシ ュ]では、お菓子やさをり織りなど、講師を招いての幅広いジャンルの教室も開かれており 、遠方からの生徒さんも少なくありません。
森さんをお店に訪ねると、島本町に暮らすgrafスタッフの増地さんの家でこの夜に予定 している食事会のお料理の仕込みの真っ最中でした。
「森さん今日はよろしくお願いします。今夜のメニューは何ですか?」
森さん「こんにちは。今、仕込んでいるのは、小泉さんのところの野 菜を使ったトマトとナスの和風スープと、カツオのたっぷり香味野菜のサラダです」
「わぁ、楽しみです。では後ほどよろしくお願いします」
パンや雑貨など、それぞれお買い物を楽しんでお店を後にしました。
食と暮らしのうるおいサロン Relish(レリッシュ)
京都府乙訓郡大山崎町大山崎西谷4-6 2F
TEL/075-953-1292
営業時間/10:00~18:00
月曜休(祝日、10日は営業)
http://www.relish-
style.com
最後にお伺いしたのが、grafのスタッフである増地孝泰さんのご自宅。島本町の閑静な 住宅街にあり、2階のベランダからはお家の周りの田畑も見えるという、のどかな環境です 。増地さんご夫妻が4年前に建てたこの家は、設計とデザインをgrafが担当。4年の間に大 きく成長したというエントランスのシマトネリコの緑がとても爽やかです。
玄関から入ってすぐのダイニングは、自然光がふんだんに入り、とても明るい印象。テ ラスに繋がっていて、今回のような大人数でのホームパーティーでもゆったりと寛げます。 キッチンは、奥様の恵美子さんが使いやすいように設計。「オープンキッチンはあまり好き ではないので」と、全面引き戸のクローゼットになっており、器や鍋類はもちろん、冷蔵庫 まで隠れる構造に。シンプルながら木の温かさが感じられる、grafらしい空間です。現代ア ート好きの増地さんご夫妻、家のあちこちにさりげなくアート作品が置かれていて、暮らし の中にアートが溶け込んでいるのはさすがです。
一方で2階のリビングは、ゆっくりと夜に寛ぐのにぴったり。照明の調光がスイッチ1 つで変えられるようになっており、気分や来客の時に合わせて部屋の雰囲気も変えられます 。しかし普段は1階のダイニングで過ごすことが多く、食事後そのまま寛ぐことが多いそう 。
またお庭には、友人のガーデナーと相談して60種類以上の植物が植えられています。芝 生代わりにヒメイワダレ草が植えられていて、ちょうど取材の時にはお花畑状態でした。芝 生よりも手間いらずでこんなにかわいいとは!
さて、今回の取材のシメは、とても豪華な料理セッション!
[レリッシュ]の森さんと料理研究家の堀田さん、[graf dining: fudo]のシェフ、舟木
さんの共演です。食材の主役は、小泉さんの畑で朝に収穫した[ense]の新鮮な野菜と、こ
の連載でもお馴染みの滋賀・湖北の若手農家集団[konefaコ
ネファ(kohoku new farmers)]の米や小麦。
パーティーを題して『enseの夏野菜の料理会』。小泉さんのご家族や[アサヒビール 大山
崎山荘美術館]の山城さんもご招待しました。
気になるメニューは、
松井さんデザインのgrafのオリジナル調理鉢『一二三(ひふみ)』の白い食器に見た目
も鮮やかに盛り付けて、パーティーの準備は完成!
みんなで乾杯した後は、少し早い夏野菜のオリジナルメニューに舌鼓。冨田さんが持参した
冨田酒造の銘酒も登場で、自然と箸と会話が進みます。
赤米の米粉は粘りが少なく、天ぷらにするとサクサクに。ズッキーニやタマネギ、ナス など肉厚にカットされた野菜の瑞々しさが、一口かじるとジュワッと口の中に広がります。 さっぱりとした冷製スープとも好相性でした。香味野菜がアクセントになったサラダは、シ ャキシャキの朝採り野菜のおいしさがダイレクトに伝わります。山芋と玄米米粉のW効果で 、粘りとモチモチ感が新食感のお好み焼きは、grafの松井さんがホットプレートで次々と焼 き上げましたが、スグになくなってしまいました。
最後には、酸味が爽やかなゼリーで口当たりもさっぱりと。食べ終わって後片付けが終 わった頃には、いつものように予定時間を大幅に過ぎてしまいました
大山崎・島本・水無瀬、京都と大阪の境のこの地で働いている人、暮らしている人...。
みんな自分なりの暮らしの楽しみ方をちゃんと分かっていて、それを無理なく実践している
人ばかりで。そしてお互いに程良い距離感で繋がっていて...。
食事会では「こんなところに住みたい!」という素直な声も。憧れというよりも、もっと身
近で親近感を持てる、そんな毎日の暮らしのお手本にしたいディテールが満載の大山崎の旅
でした。
今回訪ねた[ense]の小泉伸吾さんとは、10年以上の付き合いになるスタッフもいて、 小泉さんの畑も何度目か訪問したことのある人がほとんど。しかしミーツ畑を通じて実際に 畑作りに携わるようになった今、以前に訪ねた時とは畑の見方が違ってきました。
「小泉さんの畑の中でも、ナス畑はいつもきれいで機能的だなと感心しています。いか に手をかけ過ぎずに高品質の野菜を作るかが追求された賜だと思います。何よりきれいな水 が湧き出る山と緑が大山崎の宝だと感じました」。
「前回、小泉さんの畑を訪れてから3ヵ月半ですが、その変貌に驚きました。前回訪ね た時とは違う場所に畦ができていたり、作付けされていたり、またナスやトマトなどの野菜 の成長が早くて...。プロの農家の姿を目の当たりにして、私たちとは生活のサイクルや時 間の感覚が全く違うものなのだと感じました」
「私は今回初めて小泉さんの畑を訪ねました。第一印象は、きれいな畑! 畑を見学さ せて頂き、いろいろ考えてみると、畑ってすごくシンプルだなと実感。農作業が簡単ではな いことも理解してるけど、やればやるだけおいしいものがいっぱいできる。必要な物で無駄 がなくて、しかもおいしい。仕事と食べること、仕事と暮らしが直結していること。そして 伸吾さんは、この畑でご家族を養っているわけで...。いつも笑ってる伸吾さんの姿とこの 畑の有り様を見て、特別じゃない当たり前のようなことが、とても大事なことなんだと改め て感じました」
「伸吾さんには最近、野菜作りで分からないことがある度に、質問して教えてもらって います。だから今回の見学もとても楽しみでした。私たちがミーツ畑で育てているナスは育 ちが遅く、またイノシシや鹿に食べられてしまったりして...。それに比べて、伸吾さんの 畑のナスは(800苗も植えているそうですが)、竹林の廃材の竹を再利用して支柱にしたり 創意工夫が施されていて、美しくきれいに成長していて感動しました。さすがプロの仕事! でも私たちにはすごいと感じることも、伸吾さんにとっては自分の仕事として当たり前の ことなんだろうと思い、改めて伸吾さんを尊敬しました。土のことや日々の暮らしのことな ど、伸吾さんにはまだまだ聞いてみたいことがたくさんありますが、[ense]の作物を食べ られることをこれからも楽しみにしています」
続いて訪れた[アサヒビール大山崎山荘美術館]では、学芸担当の山城さんにご案内頂 いて、初めて知ることもたくさんありました。
「加賀正太郎さんが100年近くも昔に造った建築とお聞きして、そんなに昔のものとは思 えない素晴らしい別荘であり、建物の細部にまでわたるこだわりを拝見して、現代を生きる 自分と重ね合わせて、自分にこんな"粋な"発想があるか考えさせられました。今後の自分の 仕事やライフスタイルに、少しでもこうした"粋な"アイデアやスパイスが利かせれたらと思 いました」
「大山崎山荘美術館は今までも何度か訪れていますが、壁のタイルと柱や梁の組みあわ せ、天井の廻り縁の筍の彫り模様など新しい発見もあって新鮮でした」
「ステンドガラスから差し込む黄色い光が、メキシコのルイス・バラガン邸の様にも感 じられ、山荘を造られた加賀正太郎氏の想いが伝わってくる、とても居心地の良い空間でし た」
「細部のディテールにまでこだわっている内装や装飾は圧巻!」
「私は大山崎山荘美術館で行われている中国茶会のスタッフとして、年に2回は訪れて いますが、天井の廻り縁の筍の彫り模様やここが昔レストランだったことなど、知らないこ ともあって、おもしろかったです。加賀正太郎さんは当時の日本有数の資産家ですが、生き たお金の使い方が分かっていたんだなと思いました。100年近くも前に資産を投じて造った 建物が、今でも貴重な建造物として生き続け、多くの人を感動させているんですから」
そして、増地邸での食事会。季節毎に違う花が咲く庭や、自分たちのライフスタイルに 合わせて設計された空間など、同じ職場のスタッフから見ても"増地さんらしい"家で、うら やましく思います。そこで行われた食事会は、[ense]の野菜に[レリッシュ]の森さんの 料理と、この日出合った事を食という形で集約したようなほのぼのとした会になりました。
いつもの如くで陽気に乾杯! 小泉さんのご家族や[大山崎山荘美術館]の学芸員の
山城さんも参加して頂きました。
「[レリッシュ]の森さんたち、3人の料理人が用意してくれた小泉さんの畑の野菜を 使った料理やデザートは、どれも本当においしかったです。森さんが作られたトマト、茄子 、胡瓜、ミョウガを使ったトマトとナスの冷製和風スープは、新鮮で喉ごしもよくて、とて も夏らしい感じでした。森さんのつくるレシピは、簡単なのに抜群においしいです。[graf salon]でも、秋に『一二三の会』でまた森さんにお料理をお願いする予定です」
「久しぶりに訪れた増地邸は、住人と家がシンクロしていってるような感じもしました 。無駄のない空間で、アートや植物なども毎日の暮らしに自然と取り入れられていました。 私もいつか自分のライフスタイルに合わせた家を持ちたいと思いました」
「シンプルに見えたお好み焼きですが、よく見るとかなりの種類の具が入っており、王 道好きの自分としては、おいしいのかなあと思っていましたが、食べてみると結構ハマりま した。デザートもゼリーとジュレの二層で食感と味のブレンドが楽しめました。皆でホーム パーティーのようにごはんを食べるのも久しぶりだったので楽しかったです」
「とても楽しくて贅沢な時間になりました。このEEIEで繋がった湖北の[konefa]の作る旬の食材と、大山崎の旬の 食材を堪能し、森さん、舟木くんとも料理の話も出来て良い経験になりました。そして、何 よりこの素晴らしい空間を提供して頂いた素敵な増地夫妻に感謝!」
京都と大阪の境に位置し、山々の美しい自然に囲まれた大山崎。この地については、み んなそれぞれに感じることがありました。
「大山崎は時間がゆっくりと流れている中で、自然と人とが繋がっていることがはっき りと感じとれる場所だなあと思いました。子供の頃、夏に山へ甲虫や蝉を捕りに行った懐か しい記憶が蘇ってくる心地良い風景。町並みの佇まいも、その様な趣を残しており、ここを 訪れた人たちに親しみと安らぎを与えてくれます」
「大山崎は都心から見るといわゆる田舎ですが、京都の中心部や大阪からもさほど遠く なく、新興住宅地があったり、小泉さんの畑にいると横を特急列車が走ったり、近くには大 きな高速道路や高架もあったり...。本当の田舎というのとは違い、私たちにはお馴染みの 現代社会の利便性と融合して成り立っていることに、本当の田舎を知っている地方出身の自 分にとってはカルチャーショックに似た違和感を感じました」
「近くて遠く感じる大山崎、この地は何か懐かしくちょっと昭和な感じもする。天王山 など近くに迫る小高い山々が、この地に住む人々に喜びと優しさを与えているような印象が しました」
「大山崎、水無瀬という、素晴らしい自然に囲まれた地で暮らしている幸せを改めて感 じた1日でした」
最後に今回お世話になった方々も含めて、大山崎界隈には、地域のネットーワークや、 地元に根差したコミュニティーがあってすごくいいなと思いました。夜の食事会の時に、小 泉さん、[レリッシュ]の森さん、[アサヒビール大山崎山荘美術館]の山城さんの3人が 何やら新しい企画の話をしていましたが、音楽と食をあわせた企画で大山崎をもっと盛り上 げようという目論みのようです。3人とも、この大山崎の未来を想像し、先導していく人た ちなんだと思います。そんな姿から、みんなこの地が好きと言うのがじんわりと伝わってき て素敵だと思いました。
grafの飲食部門も、前のシェフだった堀田が独立して、今は新しいシェフとして舟木が
頑張っています。小泉さんとの食のイベント『Taste Of Folklore』は昨年の水都大阪2009
で一区切りしましたが、小泉さんとはまだまだより良い関係を築いていきたいと思っていま
す。そんな小泉さんが頑張っている大山崎の人々を、私たちはこれからも応援しますし、
grafも何かお手伝いもできたら、と思っています。
大山崎の皆さん、これからもよろしくお願いしますね。