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grafが近畿2府4県を旅して考えるきれいなくらし

10.07.28

Chapter.1 [ense(エンセ)]の農業士・小泉伸吾さんの畑を訪ねて。

京都府の南西部、大阪府との境に位置する大山崎町。
京都府内では最も小さな街ですが、JR東海道線や新幹線、阪急京都線、名神高速、国道171号線など、たくさんの交通網が縦断している交通至便な地。古代から中世にかけては平城京、長岡京、平安京という3つの都の出入り口に当たり、淀川の水運を利用した物流の要として賑わった場所で、豊臣秀吉と明智光秀が天下を奪い合った山崎合戦や、幕末の禁門の変など、多くの戦乱の舞台にもなりました。
またシソ科の一年草から採る油・エゴマ油の原料の仕入れから製油・販売に至るまで、独占的な特権を得た中世日本最大規模の油座があったことでも有名です。

いつものように朝にgrafビル前に集合して、名神高速で大山崎へ向かいます。中之島からだと早くて約30分の好アクセス。しかし大山崎ICを下りると、そこはもう天王山の深い山の緑に囲まれた田舎町で、国道171号線を南下すると東には桂川も見えてきます。

JR島本駅で、お馴染み[冨田酒造]の冨田さんも合流し、早速向かったのは、[ense]というブランド名で野菜を栽培し卸している小泉伸吾さんの畑。結婚を機に、大山崎の奥様の実家の農業を本格的に始めて今年で17年目、自らを「農業士」と名乗っています。ちなみに小泉さんはgrafの荒西さんや服部さんもメンバーのジャグバンド[pug27]のサックスプレーヤーでもあり、『Taste Of Folklore』のイベントでは「テイスト・オブ・フォークロアラウンジオーケストラ」というイベントの為のバンドのリーダーでもあり、演奏も。つまりgrafメンバーとは、仕事でもプライベートでもいい関係で、長い付き合いです。

この[graf dining: fudo]の前身[cafe ソクラテス]時代から続いてきた『Taste Of Folklore』は、農家、料理人、お客さんが一体となり、普段のお店の営業の中では感じられないお客さんの反応などを感じることができるイベントです。初回は小泉さんが作った同じ食材を使って、ジャンル違いの料理をその場で作る方法でした。毎回テーマも異なり、回を重ねるごとにだんだんと変化してきました。毎回イベントの後半には、人間の食に対する貪欲な本能がむき出しとなり、料理を出すのがこわいくらい(!)だったとか。
場所も中之島のgrafビル内だけでなく、福井県の[金津創作の森美術館]での「graf展」や昨年の[水都大阪2009]など、番外編もありました。福井ではそば粉など地元の食材を使い、当時シェフだった堀田さんを中心にgrafはそば粉のクレープを、現地の方にはそばを打ってもらい、メニューでの交流も。それはまさに「テイスト オブ フォークロア=民族を食らう」として、相応しい内容となりました。

[ense]の野菜は、小泉さんが毎週お店に配達します。その都度畑の状態や旬の食材をこまめに教えてくれます。[graf dining: fudo]の前シェフの堀田さんは「こんなにリアルに畑の情報がきける農家さんと知り合ったのは初めてでした。その時その時の旬の野菜は何なのか?を考えてメニューを考案する様に変わりました」と、言います。今までの農家のイメージから野菜料理の考え方まで、『Taste Of Folklore』と小泉さんとの出会いから大きく影響を受けたそうです。それは堀田さん個人にとっても、現シェフの舟木さんによる新生[graf dining: fudo]としても、方向性を定める原点になったといっても過言ではありません。

現在は、農協や京都の市場に卸す一方で、小泉さんがもともとアパレルで働いていた人脈を活かして、7年前から[graf dining: fudo]や靱本町の[バルベス]、新町の[カフェルーム ロカ]など、大阪の飲食店やカフェなどにも卸したり、マルシェなどのイベントでも販売。今ではどの店でも、小泉さんの減農薬野菜は欠かせない存在です。

「おはよう、今日はよろしくお願いします。伸吾さんの畑、とても楽しみにしてきました」

小泉さん「おはようさん。じゃあ早速畑へ行きましょうか」

まず畑に着いてのみんなの第一声は......、

「すごい! めちゃきれい」

野菜の種類によって整然と整備して植えられているレイアウトだけでなく、青々と生き生きしている野菜の葉っぱもきれ いです。最初に訪れた畑では万願寺唐辛子やナス、トマトなどが作られていました。

「この万願寺唐辛子の栽培の仕方、きれいですね」
「いろんな栽培の仕方があるんや。こんなのは初めて見た」

万願寺唐辛子の根元には藁が敷かれて、1本1本、杭で支えられています。

「ここでも竹が使われているんですね」

小泉さん「そう、毎年竹は使ってる」

大山崎は筍の名産地としても有名で、あちらこちらに竹林が見られます。毎年整備した竹の廃材は、こうして有効的に再利用されています。そしてよく見ると、土の上に藁が敷かれているところと、『マルチ』と呼ばれる農業用のフィルムが貼られているところがあります。『マルチ』は土の乾燥防止や雑草抑制、温度調節機能などの効果があり、専業農家の畑ではよく使われている資材です。

「マルチのところと藁のところがあるのはどうしてですか?」

小泉さん「藁は追肥がしやすいんですよ。唐辛子はトマトより追肥しないといけないので」

「こっちはトマトですよね。品種は何ですか?」

小泉さん「分からんねん(笑)。というのも、それは去年、トマトの実から取った種で植えてん」

「へー。苗ではなく、種ですか!」

小泉さん「ダメもとでやったら結構育ったわ。だから実は何がなるか分からへん。多分ミニかフルーツやと思う」

「植物の生命力を感じるなぁ」

その隣にはマクワウリとスイカが植えられており、そこには緑の筒状のものが土に刺さっていました。これはモグラ除け。根をやられないように、音と振動が地表から18m下まで響くんだそう。他にも、ナスの畑のあぜ道沿いにはナスに虫害が出ないようにするために、トウモロコシ科の植物がアブラムシなどの害虫を集めるように意図的におとりとして植えられていたり、野生動物や害虫から野菜を守るための様々な"仕掛け"が施されていました。grafが携わっているミーツ畑でも動物の被害が絶えないため、みんな興味津々です。

続いて案内してもらったのは、屋根のないビニールハウス。ここでは出荷用のいろんな種類のトマトが栽培されています。黄色やミニ、黒いトマトまで。背丈ほどに成長したトマトは、もういくつかは食べごろに。

「うわー。ミーツ畑のトマトと全然違う!」

小泉さん「どうぞ採って食べてみてや」

「甘くておいしい! それにしてもどうしてこのハウス、屋根がないんですか?」

小泉さん「トマトは手を掛けすぎたらあかん、水はあまりやらんほうがいいって聞いたから。もともと雨除けに屋根は張ってたんやけど、乾燥しすぎて土自体があかんようになってしまって...。それで屋根を外して雨が当たるようにしたら、それが良かったみたい」

「これは出荷用だから間引いたりするの?」

小泉さん「だいたい1本の苗で7段ぐらいで止めます。普通サイズのトマトで通常10個ぐらいなるところを、4個ぐらいにして甘みや栄養分を実にしっかり行き届かせる。数が少なくても質がいいトマトを作るようにしてるねん」

「数より質ですね」
「参考になるなぁ。小泉さんところは畑どれくらいあるの? 稲作もしているんですよね?」

小泉さん「そう、お米も作ってる。農地が点在しているんで、全部合わせた広さは分からんなぁ。だいたい3年のローテーションで田んぼと畑の場所を変えてる」

「うわー、大変そう。点在しているのは農地を増やしているってこと?」

小泉さん「いや、これは典型的な都市型農業の特徴で、この辺りは都市開発で道路ができたり、家が建ったり、その繰り返し。だから農地も自然と分散してしまったし、これからもどうなるかも分からない。でも畑で野菜の病気が流行ったりすると、分散してた方が被害が少ないから、悪い面ばかりでもないよ」

「なるほどね」
「夏野菜で忙しくなるのはこれから?」

小泉さん「そう、7~8月が毎朝収穫で忙しいね」

「あの...、手伝いにきてもいい?」

小泉さん「何の告白やねん(笑)。ええよ、もちろん! 是非お願いします」

grafのメンバーや料理研究家の堀田さん、それに酒米作りもする冨田さんにとっても、まるで研修のような、質問攻めの畑訪問でした。

食べた野菜のおいしさに感動すると、必然的にその野菜が育てられた環境や工程が気になるもの。小泉さんの野菜が生まれる環境は「さぁ、安心して育ってくれ」と言わんばかりにきれいに整備されていました。畑は言わば「野菜が暮らす家」。[ense]の野菜の家はとても豊かで、小泉さんは頼れる大黒柱に見えました。

  • 小泉伸吾さんは真摯な農業家である一方、気さくで多趣味、人を惹き付ける人柄です。grafも畑に関する相談などにものってもらっています。
  • 昨年の「水都大阪2009」の『Taste Of Folklore』の様子。この時は[ense]の野菜で、堀田さんたちによってフードジオラマが作られました。
  • 同じく「水都大阪2009」の『Taste Of Folklore』。小泉さんはgraf作の特設カウンターに設えたプランターで野菜の種まきをレクチャー。
  • 小泉さんと堀田裕介さん(左)。昨年の水都大阪2009での『Taste Of Folklore』はこの2人がタッグを組みました。
  • これは万願寺唐辛子。根本にはきちんと藁が敷かれていて、1本ずつきちんと杭で支えられています。
  • 機能的にきれいに手入れされているナス畑。小泉さんの農業に対する愛情とクリエイティビティが溢れた畑です
  • 地面を覆っているのが『マルチ』と呼ばれる農業用フィルム。茎と支柱が伸びるところには穴が開けられて、丁寧に張られています。
  • こちらはマクワウリとスイカの畑。右端に一列に植えられているのは、害虫を集めるたけに植えられたおとりのトウモロコシ科の植物。
  • この中央の筒状のものはモグラ除け。音と振動を発生させて、地表から18m地下まで響かせてモグラを近寄らせないようにする。
  • ナスの畑の左に植えられたトウモロコシ科の植物は、害虫から野菜を守るためのおとりの役目をしています。
  • こんな楕円形のトマトも。きれいに赤く熟しています。
  • この黄色がかったトマトは『フルーツイエロー』という品種。その名のとおり、フルーツのように甘くて美味しかったです。
  • 四方八方に茎と葉を広げるズッキーニ。黄色い花が枯れた後に実を付けます。
  • 大根はこうしてネットで覆われて、害虫が付かないようにされています。
ナチュラルガーデンのような畑。小泉さんの美意識の高さが感じられます。
川西さんは夜の食事会のために、小泉さんの畑でハーブ摘み。摘んだハーブを使ってミントティーを淹れる予定です。
小泉さんの畑のそばで、おしべとめしべが壁掛け時計のような珍しいカタチをした花を見つけました。トケイソウの花だそうです。
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