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VOICE

grafが近畿2府4県を旅して考えるきれいなくらし

10.06.30

Chapter.3 湖西の食の恵みと、自然と共にくらす人々との交流。

[ソラノネ紀伊國屋]の周りに拡がる畑。向こうには湖西の山々が見えます。自然を満喫です。

お昼ご飯はせっかくなので、[針江のんきぃふぁーむ]のお米が食べられる[ソラノネ紀伊国屋]へ。この食堂がある安曇川泰山寺附近は、初めて訪れた人は途中で必ず「こっちであってる?」と不安になるようなところなんですが、平日にもかかわらず多くのお客さんで賑わっていました。その人気の秘密はかまどで炊くおいしいご飯。「愛農かまど」と呼ばれるこちらのかまどは、湯沸かし、オーブン、炊飯、と3つの役割をひとつの炊き口で同時に果たすことができる万能かまどで、戦後の燃料不足の時代に酒井章一さんという料理研究家が考案したものだそうです。[ソラノネ紀伊国屋]ではこのかまどで炊いた炊きたてご飯が食べられるだけでなく、自分でかまどでご飯を炊く体験コースもあります。そこで私たちもかまど炊きを体験。店長の松山剛士さんにご指導頂きました。

松山さん「では2班に分かれて、石津さんのお米『ミルキークィーン』と、もう1班は旬なので筍ご飯を作りましょう」

「このかまど、炊き口は1つだけど上に鍋を2つ乗せられるようになってるんですね」

松山さん「片方でご飯、片方でカレーを作ったりもできます。中はオーブンにもなるので、ピザやクッキーも焼けますよ」

「なんて効率のいいかまど! ミーツファームにこのかまど造りたいなぁ」

薪を割って、火を付けて待つこと約20分、釜に近付くとご飯のいいにおいが! 松山さんの「そろそろですね」という合図で、かまどから下ろして蒸らします。10分近く蒸らしたら、いよいよフタをオープン。モワッとした湯気と炊きたてごはんの独特のおいしいにおいが一気に広がります。

「おいしそう!」
「石津さんのお米をこんな風に食べられるなんて、贅沢」
「早く食べよ!」

炊きあがった筍ご飯には、自分たちの手で摘んだ山椒の葉を乗せて。新鮮な朝採り野菜のサラダやひじき煮などの惣菜、豆乳スープ、オムレツなどのおかずと共にいただきます。

「ミルキークィーンのおこげ、香ばしくてたまんないねー」
「卵かけご飯も、最高!」

みんなおかわりして、2種類炊いたご飯があっという間に無くなりました。比良山が一望できる有機栽培の畑といい、かまどといい、ミーツ畑で毎週のように土を触っているgrafのメンバーたちにとって、かなり刺激的でおいしい体験になりました。

  • ここが[ソラノネ紀伊國屋]。左側が食堂の棟。右がご飯を炊くかまどの棟。
  • 取り囲む自然とマッチした、牧歌的でカントリーなテイストが溢れています。
  • このかまどでご飯を炊きあげます。煉瓦を組んでコンクリートで固めたかまどです。真ん中の穴でピザを焼くことも出来る優れものです。
  • かまどの窓から火加減を見ながら、じっと炊きあがりを待ちます。
旬の筍を入れた筍ご飯が美味しそうに炊き上がりました。
炊きあがった筍ご飯に、庭で採ってきた山椒の葉を添えて。お焦げも良い感じで美味しそう! 早く食べたい!
畑で朝採りした新鮮な野菜を使った惣菜。シャキシャキしてて、野菜本来の甘味がして美味しい。

ソラノネ紀伊国屋

滋賀の[ブルーベリーフィールズ紀伊国屋]がプロデュースする農家カフェ。
畑で実際に野菜を作りながら学ぶ「ソラノネ有機農業塾」といった年間コースのほか、料理教室やワークショップなども人気。かまど体験は、おかずや汁物がセットで大人1,575円(要予約)。

高島市安曇川町田中4942-1
TEL/0740-32-3750
営業時間/10:30~17:00
木曜休
http://soranone.jp

次に、石津さんが「ぜひ会って欲しい人がいます」と、案内してくれたのは、[ソラノネ紀伊国屋]の近く、安曇川町下古賀にある[楽農舎なごみの里観光農園]。
ここでは四季折々のフルーツや野菜の収穫体験や平飼い養鶏の卵拾いができます。
ここで馬と一緒に暮らしているのが、『馬子さん』こと杉野真紀子さんです。 真紀子さんは、2002年から5年間、バイクで世界一周した後に、2008年には今度は馬でモンゴルを旅した経験の持ち主。今はここで、楽農舎の農作業を手伝いながら、田舎暮らしをしています。早速、真紀子さんが飼っている馬を見せてもらいました。

「初めまして、突然お伺いしてすみません」

真紀子さん「こんにちは。こんなに大勢いらっしゃるとは!」

「この馬とはいつから一緒に住んでいるんですか?」

真紀子さん「1年になります。もう26歳のおじいさん馬なんですよ。シロ君といいます。乗ってみますか?」

「ぜひ!」

ほとんどのメンバーが馬に乗るのは初めてでした。バイクや自転車と違って、馬は動物。意思があるので急に草を食べようと下を向いて落ちそうになったり、予期せぬ行動に最初は緊張しましたが、慣れてくるとみんな自然と笑って乗っていました。昔の旅の話なども聞いてみたかったのですが、日が暮れてきたので、また[旅のカフェ]で後ほど合流することに。

杉野真紀子さん
http://ameblo.jp/cavalo

楽農舎なごみの里観光農園
滋賀県高島市安曇川町下古賀2579
代表:坂下道良
http://homepage2.nifty.com/rakuno-shya/

  • 道の奥に拡がるのが[楽農舎なごみの里観光農園]。車道の右奥に鶏小屋や厩舎がある。
  • 愛馬の白馬を颯爽と乗りこなすこの女性が『馬子』さんこと杉野真紀子さん。
  • 田中さんも馬子さんのサポートでうまく乗りこなしています。
  • 冨田さんも颯爽と馬を乗りこなしています。気分は"滋賀のチンギスハーン"!?

杉野真紀子さん(左から3番目)、石津さん(左から5番目)と一緒に。湖西には動物や植物、それに自然と共存して暮らしている人々の笑顔がありました。

この日、最後に訪れたのは、[高島市新旭水鳥観察センター]。
琵琶湖にやってくる野鳥を観察するだけでなく、カヌーを使った自然観察ツアーやロープを使って木に登る"ツリーイング"など、アクティビティも体験できる施設です。この中にある[旅のカフェ]は、いつもは昼のみの営業ですが、今回は特別に晩ご飯を兼ねてお伺いしました。今日お世話になった人や湖西に住んでいる同年代の人達と、さらに親睦を深めるための交流会(という名の飲み会、いつものパターン...)です。

水鳥が観察できるよう、窓際には肘付きソファがゆったりと並んでいて、私たちが訪れた時はちょうど日が沈みかけの琵琶湖を観察することができました。水面の色と空の色がグラデーションのようで、実に神秘的!

カフェは2階建てになっていて、1階は「ウッド・アンド・キャンバス・カヌー」という木と布を使ったカヌーなどの木造船やその製作過程が展示されている[ウドゥンボートセンター]。このカヌーは、19世紀末ごろ、アメリカのメイン州で始まったものと言われ、アメリカンインディアンが使っていたバーチバークカヌー(※バーク(Bark)=木の皮)がその起源と言われています。これを製作するワークショップなども行われており、それは時には海外から講師を招いての本格的なもの。晩ご飯のメンバーが揃うまで、センターのスタッフ村尾さんに案内していただきました。

村尾さん「今から100年以上も前のカヌーを、地元の木や帆布を使って当時と同じ手順で作っているんです」

「すごくきれいな形ですね」
「これはすごい! 僕は家具職人なんで、こういう木製の物を見ると作りたくなる...。この技術は一体どうやって? これはオークですか? ここまできれいに曲げるのって難しいですよね」

村尾さん「主に古い書籍や残された資料をもとに、昔の設計図から実物大の図面を起こして再現しました。北米にはこのカヌーの資料をきちんと保存しているミュージアムがあって、レプリカ制作もしています。カヌーの本場、メイン州のノースウッドから講師を招いてワークショップも行っているんです。ちなみにこれがその古い書籍です」

「うわー。なんか見てるだけでワクワクするわ」
「このカヌーは使われることもあるんですか?」

村尾さん「もちろん、実際に琵琶湖の自然観察ツアーに使われていますよ」

「ワークショップ、参加してみたいなぁ!」

そして[和ろうそく 大與]の大西さんや[針江のんきぃふぁーむ]の石津さんと奥さん、『馬子さん』こと杉野真紀子さん、高島でアクセサリー作家をしているという和田さん夫妻などなど、湖西繋がりのメンバーが集まってきて、わいわいと[旅カフェ]のおいしいお料理を食べながらの大懇親会に。冨田酒造のお酒も登場し、馬子さんの旅話(恋話も!)に盛り上がったり、大西さんの和ろうそくを灯してまったりしたり、さらに馬子さんの歌も飛び出し、楽しすぎてまた予定時間を大幅に過ぎてしまいました。外に出るとすっかり夜。「この辺りは星もきれいなんですよー」と、言われて見上げるとこの日は満月。別れを惜しみつつ、丸く輝く月と湖西メンバーに見送られて帰路につきました。

取材の翌日、[近江手造り和ろうそく 大與]の大西さんからメールが送られてきました。

「宴のあと、石津くんたちと、満月の夜に湖西のメンバーで定期的に集まって、情報交換とか悩み相談とか、なにかおもしろいイベントを考えたりとかしたいね、という話をしていました。意識の高い人間が集まって、これからの自分たちのこと、自分たちの地域のこと、滋賀から発信できる"なにか"を考えていけたらな、と思います」

そんなきっかけ作りができたなんて、grafとしてもEEIEとしても光栄です。また私たちとも"なにか"一緒にできればいいなと思います。

  • [高島市新旭水鳥観察センター]。この中にカヌーを展示している[ウドゥンボートセンター]と[旅のカフェ]があります。
  • [旅のカフェ]の窓から眺めた、陽が暮れゆく琵琶湖の光景。
  • 1階の[ウドゥンボートセンター]には、カヌーなどの大小様々な木造船やその制作過程が展示されていて、ワークショップなども行われている。
  • カヌーの横のホワイトボードには、木造船の造り方や部品について事細かく書き込みが。
  • 地元の木や帆布を使って100年前と同じ手順で作られたカヌーに、家具職人の荒西さん、興味津々です。
  • この日のメニューは、3種のスコーン、マグロの和風カルパッチョ、イワシとキャベツのオーブン焼、玄米ときのこのリゾット、鯛のアクアパッツァ風などなど。
  • [旅のカフェ]の宮田京子さんとスタッフさん。美味しいお料理をありがとうございました!
  • 大西さんに[大與]の和ろうそくに火を灯してもらいました。ろうそくの灯りが幻想的で癒されました。

旅のカフェ

コーヒーやココアなどは出来る限りフェアトレード製品を、野菜も近隣農家が作った有機栽培のものを使うなど、食材にこだわったナチュラルカフェ。[高島市新旭水鳥観察センター]内にはシアターもあり、椅子などの設備は実は大阪にあった[扇町ミュージアムスクエア]にあったものなんだそう! 意外なところでちゃんとリサイクルされていました。

高島市新旭町饗庭1600-1 高島市新旭水鳥観察センター内
TEL/0740-25-5803
営業時間/10:00~17:00
火曜休
http://www.okubiwako.net/mizudori/

Fin
(取材/天見真里子)

grafからのメッセージ

同じ滋賀県とはいえ、以前にこの連載企画で取材した湖北とは環境や空気感などがまるで違っていた湖西。気候がそう思わせるのか、琵琶湖と山々が街に接近していて、緑も豊かで、陽光に湖岸がキラキラ輝いていて、とてもキレイでした。

今津の街から山の方へしばらくクルマを走らせて上がって行くと、ちょっと遠くまで旅に来たような里山の風景が。そんな風景の中にある[ソラノネ紀伊國屋]では、昔ながらのかまどでご飯を炊いて美味しく頂きました。自分たちで炊くと、おいしさも倍増。広大な敷地と小麦畑と青空を頭のてっぺんから足の先までいっぱい感じて、心も体も満たされる時間でした。

  • [ソラノネ紀伊國屋]の向こうに拡がる広大なブルーベリー畑。無農薬で育てられたブルーベリーは、ジャムにして販売されています。

印象的だったのが、[針江 生水の郷]での川端のある暮らし。 以前からみんな知ってはいましたが、実際にこの地を訪れたのは初めて。この地域で暮らす人々の生活にはいつも川端があり、そこで鍋や食器などの洗い物をして、その残りかすを鯉などの魚が食べて、水をきれいにしてくれます。それは都会で生活している私たちには驚きの光景でした。自分のことだけを考えるのではなく、暮らしている地域のこと、加えて水が流れていく下流の人々の生活のことまで考えると、川端のある暮らしはとても大切で、針江の人々にとって川端は毎日の暮らしになくてはならないものなんだと思いました。川端の湧き水を飲ませて頂きましたが、各家庭で少しずつ味も異なり、どこもおいしかったです。

また石津さんの[針江のんきぃふぁーむ]の田んぼでは、『魚のゆりかご水田プロジェクト』によって、魚が戻ってくる生態系を取り戻して、豊かな自然をみんなで守りながら暮らしていて、すばらしいと思いました。そんな人々が住んでいる針江の街並みは隅々まで手が行き届いていてきれいで、丁寧に暮らしていらっしゃる姿が垣間見えました。

今回の取材で、農業を通して生態系を守ろうとしている石津さん、伝統産業の和ろうそくの大西さん、馬と暮らす『馬子さん』こと杉野真紀子さんや[旅のカフェ]の宮田さん、[高島市新旭水鳥観察センター]の村尾さん、[ソラノネ紀伊國屋]の松山さん、アクセサリー作家の和田さん夫婦などなど、湖面で暮らす個性も職種も様々な若い方々とお会いして、その暮らしを垣間見させて戴いて、湖西はおもしろい場所だなと思いました。まさに視界に広がる空の広さと深さが、皆さんの人柄を象徴しているような...。

私たちの暮らす都会でも見習えることがいろいろあって、日々の暮らしをちょっと見直すキッカケになりました。[旅のカフェ]がそんな人達が集まるたまり場になり、この日の取材の時の宴を契機に石津さんや大西さんが始めた『満月の夜の会』や、映画鑑賞会、ライブイベントなどがこれからも開催されるようです。

  • 針江の曹洞宗正伝寺。[針江 生水の郷]では、人々の間に「水は宝、共有の財産」という認識がきちんと定着していました。
  • 石津さん曰く「米を作るだけではなく、地域のコミュニティや、京阪神の水甕である琵琶湖を守り継いでいく、その文化の礎となるのが田んぼなんです」。

今回の取材で湖西の人々にお会いして気付かされたのは、この地の環境とその歴史やコミュニティを大切に受け継ぎながら、"今"を生きている皆さんの姿、その暮らしに内包された"時間の奥行き"といったものです。湖西というローカリティに根差して、その時間的奥行きを継承しつつ、明日へと繋げていこうというその姿は、前回の取材で出会った奈良の人々とも相通ずるところがあり、そのポテンシャルは私たちが暮らす都会発信の情報をはるかに凌いでいると思います。そして、皆さんのローカリティに根差した活動が拡がっていけば、単なる無時間モデルな消費を通してしかコミュニケーションを立ち上げることができないこの同時代の情報社会にも、時間的な奥行きと地域性の根が張られて、本当の意味での"日本の文化"と言えるものを形作ることができるのではないか。そんな瞬間を見たいし、私たち自身もそんな瞬間を共に創り出したいと勇気が湧きました。

自然と共存しながら、感性を磨き、自給自足して暮らしていける場所として、湖西はとても暮らしやすそうです。今回の出会いをきっかけに、これからも湖西の人々にいろいろと教わりたいなと思いました。私たちの中では昨年の取材以来、湖北がブームでしたが、湖西についてもこれをきっかけにもっと知りたいと思います。滋賀県にまた行きたくなる、そんな場所が一つ増えました。

集まって頂いた湖西の皆さんと記念撮影。楽しい宴に時の経つのも忘れて、外はすっかり真っ暗に。皆さん、ありがとうございました!

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