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grafが近畿2府4県を旅して考えるきれいなくらし

10.06.30

Chapter.1 和ろうそくの老舗[近江手造り和ろうそく 大與(だいよ)]を訪ねて。

琵琶湖の西側に当たる滋賀の湖西地方の高島市。かつて高島郡だった安曇川町、今津町、 新旭町、高島町、マキノ町、朽木村が2005 年に合併し、県で最も面積が広い高島市として生まれ変わりました。京都と福井に隣接しており、地形的には安曇川扇状地と石田川扇状地を除いて平野部が少ないのも特徴の1つ。森と里山と湖に抱かれた自然の宝庫で、夏はアウトドア、冬はウィンタースポーツでもおなじみです。

朝8時にいつものように中之島のgraf ビルを出発し、まずは今津町へ向かいます。琵琶湖の広さを感じながら湖西道路を走って、終点の比良からJRの近江今津駅方面へ。[近江手造り和ろうそく 大與(だいよ)]の工房とショップは、近江今津駅から近い住宅街にあります。[冨田酒造]の冨田さんともここで合流です。冨田さんの友人でもある[大與]の4代目の大西巧さんが案内してくれます。

「おはようございます、大西さん。ご無沙汰しています。今日はよろしくお願いします」

大西さん「どうも皆さん、今日はお世話になります」

冨田さん「僕もここに来るのは久しぶりです。工房も初めてなので楽しみです」

大西さん「ああ、そうでしたよね。じゃあ早速、店からご案内しますね」

[近江手造り和ろうそく 大與]は大正3年創業の和ろうそくの老舗であり、その和ろうそくは、福井の永平寺をはじめ、全国の多くの寺院で使われています。現在お父さんの大西明弘さんが3代目として切り盛りされていて、4代目の巧さんはろうそく作りの修業を始めて6年余り、今では百貨店での実演販売やワークショップなどで全国を飛び回っています。

  • [近江手造り和ろうそく 大與]の4代目、大西巧さん。JR湖西線近江今津駅の近く、店頭の赤いろうそくの看板が目印です。
  • 4代目の大西巧さんは、お父さんの3代目、明弘さんに付いて修業を始めて6年目だそうです。
  • 工房の裏に植えられていたこの樹が櫨(はぜ)の樹です。

そもそも和ろうそくとは、主に植物性の材料で作られたもの。ろうそくの芯もそうです。洋ローソクは主にパラフィンのような石油系や動物系の脂が原料だそう。

大西さん「歴史的には、蜜ろうから作られたろうそくの存在が奈良時代の文献に残っています。和ろうそくが登場したのは室町時代の中期、当時は漆の実から取った漆ろうが用いられていました。江戸時代には櫨(はぜ)の実から取った櫨ろうが主原料に変わりましたが、当時はかなり高価で貴重なものだったようです。現在、いろいろな素材からろうを取ることができますが、今もうちの代表的な原料は櫨ろうです」

「蜜ろうは和ろうそくではないんですか?」

大西さん「修道院の灯りとして使われていたこともあって、和ろうそくとは言い切れないんだと思います。櫨ろうそくは、櫨という植物を使って日本人が一から作ったろうそくで『ジャパンワックス』とも呼ばれています」

「櫨ってあまり耳にしたことがないですが、どんな植物ですか?」

大西さん「櫨は漆科の高木です。日本の風土が豊かな実を育てます」

「滋賀に櫨の木が多いから、和ろうそくが滋賀の伝統工芸品なんですか?」

大西さん「そうではないんです。櫨は主に四国や九州に生育しています。うちは九州から櫨ろうを仕入れています」

店内には太いもの、短いもの、白と朱色以外のカラフルな色のものなど、かなりの種類の和ろうそくがあります。燭台も、素材やデザインが豊富です。中でも目に付いたのが、いろんな花が描かれた和ろうそく。もちろん手描きです。

大西さん「これは絵ろうそくといって、東北が発祥です。東北は冬は雪に覆われ、仏前に供えるお花もありません。だからろうそくに花の絵を描いて花の代わりにしたんです」

「なるほど。先人の知恵ですね」

続いて工房へ案内してもらいました。作業は分担で全て手作業で行われており、機械らしい機械はなく、機械の音もしません。中央では3代目の明弘さんが、"手掛け"と呼ばれる灯芯にろうを掛けていく工程の作業をされていました。この作業の出来がそのまま品質に繋がる最も重要な部分です。

"手掛け"は芯を作ることから始まり、荒掛け、下掛け、上掛けの3工程に分かれてろうを丁寧に塗り重ねていく作業。上質なきめの細かい櫨ろうで化粧仕上げをした最後に、芯の部分が出るようにろうそくの頭部を切ります。棒の先20㎝ぐらいにろうが掛けられた細長い形状は、まるで花火のよう。ジャラジャラと音を立てながら手の平で、1本1本チェックしながら溶けた櫨ろうを塗っていきます。

  • これが櫨(はぜ)の実。この実から櫨ろうが作られます。
  • 1本1本、手で描かれた花が美しい和ろうそくの5本セット(2,100円)。
  • こちらは色ろうそくの5本セットの「花鳥風月シリーズ」。花・鳥・風・月とやわらかい色の組み合わせが4種類(777円~)。
  • 糠(ぬか)ろうの固まり。これを溶かして成型して、色付けをして、ろうそくが出来上がります。糠ろうとは、お米の糠から採れるろうのこと。
  • 灯芯にろうを掛ける"手掛け"の作業をする3代目店主の大西明弘さん。ろうそくの品質に繋がる重要な作業です。
  • "手掛け"の作業は3工程に分けて丁寧にろうを塗り重ねていく、熟練さが要求される作業です。

「ろうは熱くないんですか?」

大西さん「溶かした櫨ろうは42℃ぐらい。溶かした時は黒っぽい色ですけど、手ですくって塗っていくと白くなっていくんです」

完成した和ろうそくの芯の部分には、まるでバームクーヘンのように美しい年輪模様が現れます。これぞまさしく職人の手仕事の証です。ろうそくは匁(もんめ)という重さの単位で表されるそうで、100匁(=約375g)の櫨ろうそくで、だいたい7千円前後。決して安くはありませんが、炎の美しさや灯りのクオリティにこだわる、寺院の大きな行事などではよく指名買いがあるそうです。

大西さんに和ろうそくの魅力について尋ねてみると、

大西さん「燃え方の美しさだと思います。それは、煙が少なく、ろうが垂れにくく、炎がやわらかいということ。和ろうそくは、静かに燃えたり、瞬きをしているように揺れることもあるんです。このような炎の表情の豊かさもまた魅力で、眺める楽しさがあります。元々はお仏壇や法事などで使われていたものですが、これからはインテリアや贈り物など、くらしの中で幅広く使って楽しめるような提案もしていきたいと思っています」

また、3代目の明弘さんは、
「天然ものは全然違う。和ろうそく作りは、毎日の天候や作る人間の体調に影響されるので、2つと同じものはできません。良いろうは無くなって初めてその価値が分かるもの。きれいに燃えてなくなってこそ、良いろうそくなんです。和ろうそくを鑑賞するなら、是非ろうそくの灯りが生み出す風合いを楽しんで欲しい」

そんな話を聞いて、みんなその炎が見てみたくなったのか、いろいろ購入していました。

  • これが和ろうそくの芯です。こうして和紙に長灯芯を巻き付けて作ります。
  • この紐状のモノが長灯芯。これを和紙に巻いて、ろうそくの芯を作ります。
  • ろうそくに白や朱などの色付けをしていきます。全てが手作業で行われます。

近江手作り和ろうそく 大與

滋賀県高島市今津町住吉2-5-8
TEL/0740-22-0557
営業時間/9:00~18:00
不定休
http://www.daiyo-webshop.com

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