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grafが近畿2府4県を旅して考えるきれいなくらし

09.12.24

Chapter.1 [お米の家倉]家倉敬和さんに学ぶ大規模農業の現状。

冬の訪れを感じさせる寒さとなった11 月のある日、8時にgraf に集合して、滋賀の湖北町へ向かいます。名神高速から北陸自動車道に入り約2時間半、長浜IC で降り、JR 河毛駅前で家倉さんと待ち合わせです。

そこに颯爽と現れたさつま芋を積んだ一台の軽トラ。

家倉さん「おはようございます! 朝早く遠くまですみません」
と、窓から人懐っこい笑顔が。[お米の家倉]の家倉敬和さんです。『The 田園』や[お米の家倉]のHP、さらには『ミーツ・リージョナル』の「米と野菜特集」の誌面などで目にしていたこの笑顔。
初めて会うメンバーもいましたが、「生の笑顔もめちゃさわやかですね~!」「なんだか初めて会った気がしない」と、これ以上にはない第一印象。
まずはそのまま家倉さんの家に向かい、田んぼや作業場などを見学させてもらうことに。

[お米の家倉]の家倉敬和さん(右)と高島市[針江のんきぃふぁーむ]の石津大輔さん。農業を通じて、お互いに刺激しあう、気心の知れた湖北の若手イケメン農業家コンビです。

[お米の家倉]は、琵琶湖の北の中山間地で代々米作りを続けて来た米農家で、敬和さんで5代目。
現在はご両親と敬和さんの家族経営です。

家倉さんのお住まいのご近所の街並み。昔懐かしい郷愁を漂わせる風景です。

琵琶湖をはじめ、小谷山や高時川の清流など湖北の自然の豊かさが、そのままお米のおおらかな味に表れています。
特筆すべきは農薬を使わないというお米作りへの挑戦! 無農薬・化学肥料を一切使用しないのお米作りにチャレンジし始めてから4年、それは『農薬サヨナラ米プロジェクト』として、HP 内でも全ての工程や成分表が公開されています。

山裾まで広がる広大な田んぼ。家倉さんが稲作している田んぼは160枚、総面積で約34ha。

家倉さんが稲作している田んぼは総面積約34ha(甲子園球場30個分以上!)と広大。米以外にも大豆や小麦も作っています。
さすがに親子3人での作業効率や自然に左右される部分が大きいことを考えると、約34ha の田んぼ全てを無農薬で耕作という訳にはいきませんが、家倉さんが稲作しているお米の中で看板商品の『ミルキークィーン 縁en つながり』(4年間農薬・化学肥料不使用)を始め、収穫するお米の6トンは無農薬米です。

家倉さんのお家の倉庫。高さ5m以上もある巨大な機械が並んでいて、工場のようなイメージ。

まずは、稲刈りをしたお米を袋詰めして出荷するまでの状態にする大きな作業場を見せてもらいました。
天井が高く、広いプレハブの中に何台もの機械が並んでいます。
まず目に入るのは、高さ5m以上はありそうな巨大な3台の機械。

家倉さん「これは米を乾燥させる機械です。稲穂に付いている状態の米は水分が24%ぐらいなんですけど、これを15%以下まで乾かさないと、1年間保存していく過程でカビが発生したり味が落ちる原因になります。40℃ぐらいの熱風で循環させながら乾かしていきます」

「すぐには乾かないところを、これで早く確実に乾かす、ということですか?」

家倉さん「そうです。でも昔ながらの天日乾燥で"はさ干し"させるお米も作っています」

「すごく大きくて高そうですが、1台いくらぐらいするんですか?」

家倉さん「だいたい180 万~200 万円ぐらいですね。米農家って、先祖代々培った土台があるから後継者が受け継いでいけるっていう仕組みになっていて、全くの新規就農で一から稲作を始めるのは費用がかかり過ぎてなかなか難しいんです」

「でも国からの援助や、農協からお金が借りられるんじゃないんですか?」

家倉さん「いくらか借りることはできると思うんですけど、初期投資で5千万とか、ヘタすると1億円ぐらい掛かるんで、さすがにそれを全部は貸してくれないでしょうね。これはもちろん、国が理想としている海外にも通用する大規模農家での話で、もっと小規模でお米も野菜も果樹も、とバランスを取って就農する場合などは、中古の器具を集めてもできると思います。その辺はやりようでしょうか」

他にも袋詰めされたお米を湿度と温度を保った環境で保管するための冷蔵庫や、30kg もあるお米の袋をコンプレッサーの圧力で吸着させ移動させる機械もあります。

家倉さん「30kg の米袋を年間でだいたい3~4000 袋も運ぶことになるので、農家で腰をやられる人は多いんですよ。うちはこの機械があるので、みんなヘルニアにならずに済んでます」

「4000 袋って重労働ですね! ヘルニアになったら仕事できないですもんね」

精米の部屋では、精米機に掛ける前に、石抜き、色彩選別、と行程別の機械を使って、徹底的にお米をふるいに掛けます。ホコリが入らないように、ここは扉が付いた部屋になっています。

家倉さん「最近、高温障害などで割れるお米が多いんです。『胴割れ』っていうんですが、これが製品に混ざると、炊いた時に割れ目からデンプンが溶け出して、べちゃべちゃしたご飯になる原因になります。なので、これは選別して田んぼに肥料として撒くんです」

「そういうのも肥料になるんですね。無駄にならないようになってるんだ」
「ここは何人で使ってるんですか?」

家倉さん「両親と僕の3人ですよ」

「すごい仕事量じゃないですか? それぞれ分担があるんですか?」

家倉さん「基本的にみんな何でもできるようにはしています。田畑での農作業も含め て」

「農家って田畑での仕事というイメージが強いけど、米農家は収穫してからの仕事も多いんですね」

家倉さん「そうですね。求められるお米のレベルが上がれば上がるほど、こういった新しい機械を導入するという循環になっているんです。農機具のメーカーも、僕らが『こんな機械ないの?』って言ったところから開発に至り、商品化される。そんなサイクルですね」

「確かにこれらの機械があるからこそ、ご家族3人だけでの経営が可能なんですよね」

続いては、歩いて近くの田んぼへ。家倉さんが稲作している田んぼはおよそ7km 圏内に160 枚ぐらいが散らばっていて、軽トラで移動しなければいけません。兼業で農業をしていた人が辞めた後の田んぼを、大規模農家が耕作させて頂くようになり、あちこちに田んぼが点在する今のような状況になっているんだとか。

  • 倉庫の前には強大な耕耘機が。繋がれている犬は、家倉さんの愛犬、シロ。
  • 米袋1つの重さは30kg。これを年間3~4000袋も運びます。身体が資本の重労働です。
  • 収穫したばかりの大豆。お米だけじゃなく、大豆や小麦も栽培しています。
  • [針江のんきぃふぁーむ]の石津大輔さん。農家というイメージから想像できないぐらい、頭からつま先までオシャレ!
  • 家倉さんのお宅のそばにある岡本神社は、北近江の戦国大名・浅井亮政(あざいすけまさ 1491~1542年)の出生の地。
  • 湖北町は浅井長政とお市の方との悲劇で知られる小谷城のあった地。2011年の大河ドラマ『江~姫たちの戦国』の舞台。

無施肥無農薬の田んぼを家倉さんが手で掬うと、土の中から、ほら、生きたどじょうが!

4年間農薬も肥料も使わずに無施肥無農薬で稲作している田んぼへ案内してもらいました。
田植えイベントなどもこの田んぼで行われていて、今年は古代米の黒米も栽培されています。
この田んぼにはメダカやどじょうが住んでいて、メダカはすぐに見つかるぐらい。
家倉さんが田んぼに入って土を掬うと、どじょうが元気に手の平で動いています。

家倉さん「稲刈りが終わった後の今の時期は、普通は田んぼを完全に乾かしている状態なんですが、ここはわざと水口の周辺だけ水辺を残しておいたんです」

「それは生き物のために?」

家倉さん「そうです。無農薬にして3年目でメダカが出てきました。年々成長していますね。メダカのような生物がいるってことは、それだけ環境と水が良いってこと。農薬を使う田んぼでは、カエルはいてもメダカはいませんから」

「どじょうやメダカは米作りにとって害ではないんですか?」

家倉さん「全くないです。微生物がいて、こういう生物がいて、この田んぼの中にピラミッド型の生態系ができているんだと思います。生き物がいるとフンや死骸も出る。そういう循環があるから、ここは肥料がなくてもお米が収穫できるんです」

この田んぼは田植えの後1週間ぐらい経つと、浮き草が発生したそう。この浮き草もまた、田んぼにとってはありがたい存在だそうです。

「浮き草は雑草みたいに害ではないんですか?」

家倉さん「浮き草などの水草は大気中の窒素を固定する力を持っているものもあるので、稲の生育に必要な栄養分を吸収するんです。それに太陽の光が下の土に当たらないので、雑草が生えない。水草がない無農薬の田んぼは雑草に苦労しますから」

「知りませんでした! 浮き草ってなんとなく悪いものかと思ってました」
「浮き草は田んぼにわざと入れるんですか?」

家倉さん「いいえ、自然発生です。水草が発生しない無農薬の田んぼもあって、そこは雑草に困らされています。ただ弱い稲を植えたら、例えば風で稲が倒れてしまった時に水草に稲が隠れてしまい、結果的に害になるので、無農薬の田んぼには成苗(せいびょう)という大人の苗を植えるんです。その苗づくりがポイントになってきます。
通常の苗の稚苗(ちびょう)が25日ぐらいで作るところを、無農薬の場合は45~50 日ぐらいかけて苗を作ってから田んぼに植えます」

お米ができる現場を見学したら、やっぱりご飯を食べてみたくなります。家倉さんのお家に戻って、薪でご飯を炊いてもらいました。ご飯が炊きあがる間、お母さんに教わりながら柚子味噌作りに挑みます。

家倉さんのお母さんの「ネギ味噌のつくり方」のメモ。他にもお手製のお料理のメモがいっぱい。
家倉さんのお母さんのご指導の下、川西さんも柚子味噌に使う柚子のみじん切りのお手伝いです。
男性陣もつられて柚子のみじん切りのお手伝い。男の料理対決みたいな状態に!

大豆も作っている家倉さんの家は味噌も自家製。その味噌と自宅で育った柚子を使った柚子味噌は家倉家の食卓によく登場する保存食。ふろふき大根や湯豆腐に付けたり、そのままご飯に乗せて食べても抜群。
作り方は簡単、柚子の皮をみじん切りにして、実の部分は搾ります。味噌にみりん、酒、そして柚子皮のみじん切りを入れて煮込み、砂糖を入れながら味を調節、最後に搾り汁を入れて出来上がりです。柚子のさわやかな香りと味噌の甘い良い匂いが部屋いっぱいに広がります。他に、ネギ味噌も作っていただきました。

ご飯の方は、お米を洗って20 分吸水させた後、まずは強火で一気に水分が無くなるまで炊きます。その後は弱火に。この日のお米は無農薬『ミルキークィーン 命の恵』の新米です。

  • 家倉さんのお母さんお手製のネギ味噌。舐めたら甘くて美味しいかったです!
  • 家倉さんのお母さん、今度は白菜の浅漬けを取り出して、まな板で切り分けます。故郷の母親を想い出しました。
新米を丁寧にとぎます。お米の美味しさを来出すためには、このお米とぎも大切。
薪に火を付けて、じ~っとご飯が炊きあがるのを待ちます。まずは強火で、その後は弱火に。
炊きあがったら、火を消して、お米をちょっと蒸らします。堀田さんも炊きあがりに興味深々。

家倉さん「結構アウトドア的な荒っぽい炊き方です(笑)。新米は香りが違いますよ! 昔は新米は水分が多いから炊く時の水は少なめに、と言われていましたが、 最近はお米の水分も15%以下と安定しているのであまり気にしていません」

蒸らしが終わって蓋を開けると、ホワ~ッと湯気と共に周りに炊きたてご飯のいい匂いが!

「うわ~、めちゃおいしそう!!!」

早速、試食です。炊きたての新米は絶品! 見た目はツヤツヤで食べると甘みがあり、そのモチモチ感はもち米を思わせるほど。

家倉さん「すごく存在感があるお米でしょう。お腹にたまるので、おかずがいらないぐらいだと思います。それに冷めてもおいしいのが特徴です」

「これはウマイ!」
「モチモチですね」

主食とはいえ、メニューの中ではおかずに比べると脇役的な存在のご飯ですが、炊きたてのこのご飯は、おかずの影が薄れてしまうほど主張しています。一緒にさっき作ってくれたネギ味噌を湯豆腐に付けて頂きました。ネギ味噌はご飯と食べてもおいしかったです。おかわりしたいところを、お昼ご飯が食べられなくなるから、とみんなグッと我慢しました。でも「冷めたミルキークィーンのおいしさもぜひ味わってほしいので」と、残ったご飯はおにぎりにしてくれました。

  • 薪で炊いた炊きたてのお米。お米の粒が立っていてツヤツヤに光っています!
  • 炊きたてのご飯からホワ~ンと湯気が上がって、良い香りが漂います。美味しそう!
    • 炊きたてのご飯にネギ味噌にお新香に、これまたお母さんお手製のらっきょう。これ以上はないご馳走です!
    • みんな炊きたての新米に大満足。ふっくらもちもちしていて、お米の存在感が際立っています。

お米の家倉

滋賀県東浅井郡湖北町丁野826
http://yagu.jp/

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