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grafが近畿2府4県を旅して考えるきれいなくらし

09.11.18

Chapter.1 吹きガラス工房[fresco]の魅力と辻野さんのくらし

さわやかな秋晴れの10月、いつものように[graf]に早朝集合して、クルマで和泉へ向かいます。市内から高速を使って約1時間のドライブです。
今回のナビゲーターは、元[graf living:shop / showroom]のスタッフの佐藤文さん。
ショールームの商品のセレクトや昨年の展覧会などで辻野さんとやりとりをしていて、何度か[fresco]にも訪れたことがありました。
今回は、この連載の第6回に取材させてもらった滋賀の[マンマミーア]の木工作家、川端健夫さんも参加です。

和泉市の住宅街を抜け、だんだん山に近付いていくと、みかんがたわわに実る畑が広がり、次第にのどかな風景に。
近くの道路が工事中でしたが、遠くからでも赤い文字の「fresco」の看板が確認できました。

和泉市の山裾、緑に囲まれた[fresco]の工房。左の木造の建物は併設のカフェ[Cot Cafe]。

「いつもと違う道で来たので迷ってしまって...。遅れてすみません。今日はよろしくお願いします」

辻野さん「はるばるようこそ。堺と違って近くに何にもないところだけど、ゆっくりしていってください。なんだか顔見知りに取材されるのも不思議な感じですね(笑)」

ショールーム兼ショップのスペースで。左からgrafの荒西さん、辻野さん、佐藤さん、滋賀[マンマミーア]の川端さん。

まずは、ガラス工房の奥にあるショールーム兼ショップを案内してもらい、お話をお聞きすることに。
その空間はソファやダイニングテーブルが配されたモダンなリビングのよう。
作品もショップ然と陳列されているのではなく、グラスやお皿などは窓際や家具の上にさりげなく並べられていて、一方大きな作品は、壁や床置きで独特な存在感を放っています。
アートなオブジェから実用性を兼ねた食器まで、幅広く手掛けているのも[fresco]の特徴の一つです

透明なグラスから、陶器のようにも見えるグラスまで、ハンドメイドだからこその様々な味わい。
アシュトレイや水差しなど見慣れたモノも、それぞれにガラスならではの味わいの作品です。
食虫植物のウツボカズラの花のようなフォルムとシックなカラーリングがポップな花器。
透明な箸置きもシンプルな中にちょっとしたユーモアが感じられて可愛い。
これは一本足の鳩? ガラスのイメージを覆されるような作品がそこかしこに。
これもショールームに展示されていた作品。チョコボールのキャラクターみたい!?

しかし[fresco]が今のスタイルに行き着くまでには、やはり試行錯誤の時期があったようです。辻野さんがガラス工芸の世界に飛び込んだのは、もう25 年も前。現代ガラスアートの展覧会でアートとしてのガラスに感銘を受け、専門学校で基礎を学んだ後、修業先に選んだのは、イタリアではなくアメリカでした。

ガラス工房の横に作られたカフェ「Cot Cafe」で昼食を頂いた後に、辻野さんのお話しをお聞きしました。

「graf で辻野さんのガラスを初めて見たとき、私も衝撃でした。今まで道具としてしか見ていなかったガラスそのものの印象が変わったというか...」

「でもなんでアメリカだったんですか?」

辻野さん「ガラス工芸ってイタリアのイメージだと思うんですけど、'60年代の後半に、アメリカで『スタジオグラス・ムーブメント』というアートの運動が起こったんです。要はアトリエにアーティストが溶解炉を作って、自分らの自己表現として溶けたガラスを使おうという流れ。僕はそこで、吹きガラスのテクニックを学ぶのももちろんですが、個人がスタジオを運営するノウハウも勉強できるかな、と思って渡米したんです」

「確かにガラス製品は量産されるイメージです」

「陶芸に比べると個人のガラス工房って今も少ないですもんね」

アメリカ西海岸で過ごした修行時代が、作風だけでなく、辻野さんのライフスタイルにも影響を与えているようです。

辻野さん「でも僕自身、今こうしてやっていますけど、ガラス工房って常に溶解炉に火を入れておかないといけないんで、やっぱり大変なんですよ。窯ばっかりできて、CO2をあちこちで出すことになっても環境的にどうかとも思うし...。だったら、1つの窯をみんなでシェアしたらええやん、っていうのが僕の感覚です。みんなでやることで、1+1は2じゃなくて、3にも4にもなることを僕自身、経験として知ってるんで」

「ガラスを作る作業はチームプレーの部分も大きいって言いますものね」

「ところで私たちgraf との出会いって、いつでしたっけ?」

辻野さん「僕は吹きガラスの講座をずっとやっていて、生徒さんらと定期的に展覧会を開催していたんです。生徒さんの中にgraf の服部さんと知り合いがいて、たまたまそこに服部さんと松井さんが見に来てくれたのが最初だったと思います。その時に『すごいええやん!』ってすごく気に入ってもらって、『なんかやりましょう!』って意気投合して。実際に工房にも来てもらったし、ワークショップをやってもらったりもしました」

「それが4、5年前? ここができてからですよね」

辻野さん「でしたっけ? ここをオープンしたのが2001 年です」

「なんで和泉市だったんですか?」

工房の溶解炉にはほぼ一日中、火が入れられている。溶解炉の中の壺には1300℃の溶けたガラスが。

辻野さん「知り合いの知り合いからの紹介です。和泉市には縁もゆかりもありません(笑)。こんな大きなところを探していたわけではないのですが、この環境も気に入って」

ちなみに、ここに来る前は、ガラスの原料を作っている老舗の工場が運営する吹きガラスの講座で教えていた辻野さん。しかし会社の都合で急遽閉鎖することに。

工房の入口に付けられたオブジェ? アメリカ西海岸のアトリエみたい!

辻野さん「僕が責任を感じることもなかったんですが、ガラスは設備がないとやりたくてもできないので、今まで通ってくれていた生徒さんらに悪いな、という気持ちはありました。それで自分でやってみようと、このプレハブを紹介してもらって、自らの手で改築して。でもとにかくボロボロで、結局3年近くかかってしまいました」

川端さん「僕も廃校になったボロボロの小学校跡を自分で直して工房と家と店にしたんです。それがまた広くて...。やっぱり時間かかりました」

[fresco]のカタログ。グラフィックデザインのセンスも光っています。

辻野さん「そうなんですか!小学校とは雰囲気良さそうですね。でもガラスは炉があるから、木造は火事の恐れがあります...」

やがて3年後に吹きガラスの講座を開講することになり、かつてはウェイティングリストに名を連ねるほど多かった受講生らにオープンの案内を出したものの、当時の生徒さんで戻って来た生徒はたった2人...。

ガラス職人というと無口な方かなという印象でしたが、実際にお会いすると気さくでフレンドリーで、雄弁でした。

辻野さん「生徒さんたちに『私たちにも人生があるんです』って言われました(笑)。そりゃ3年は長いですよね。でも前の講座の最初から通ってくれている方もいて、その方は今では本も出して全国を飛び回るほど多忙な人なんですけど、『私にとって唯一の息抜きです』って今も通ってくれてます。彼女はもう展覧会ができるぐらいレベルも高いし、性格も吹きガラスに合っているんだと思います」

「へ~、それは素敵ですね! 吹きガラスに合っている性格ってどんな性格ですか?」

辻野さん「今の生徒さんたちにもよく言ってるのが『ガラスは寿司やと思え』ってこと。お寿司は触ったら触るほどまずくなるから、とりあえずサッと仕上げられる技術を身に付けて、そこからシャキッとしたものを作ろう、と。1つのものをこねくり回して何とか形はできたとしても、凛とした力みたいなものは無くなるんですよね」

「なるほど、潔さみたいなものですね!」

「予想せえへんかった例えやな。スピードが大事なんやね」

右の方でスタッフがガラスに息を吹き込みつつ、辻野さんの整形作業。ガラスはチームで力を合わせての共同作業です。

実際にスタッフの方と辻野さんの連携プレイは、呼吸がバッチリと合っていて、見ていて気持ちがいい!
流れと動きを把握しているので、炉の扉を開けたり、風を送ったり、といった細かい補佐が自然と身に付いています。
辻野さんが補佐にまわることもしばしば。
まるでセリフのない舞台を見ているかのようなスムーズさなんです。

「1人前というか、ああいう連携プレイが完璧にできるようになるまで、どれくらい掛かるもんですか?」

辻野さん「うーん、1人前となると、やっぱり10 年は掛かるかな!? でも10 年やったら、やっぱり30 年かなって思います。分からない域があるんですよ。僕は25 年ですけど、『そういうことやったんか!』って気付くことが今だにある。同じものを作っていても、別のやり方の方が良い形になるとか。そういう時は頑張って変えますね。次には忘れていることもあるけど(笑)」

「吹きガラスって進化していくもんなんですね」

辻野さん「それはもう、日々チャレンジです!」

色のグラデーションや形が不均等なところが、逆にハンドメイドの味わいを感じさせるガラス皿。
中央の筒から円を描くストライプが、シンメトリックで魅力的なアシュトレイ。
リンゴのような、あるいはバランスボールのような、愛らしい形のコレも、ガラスの作品です。
工房に展示された花器。シンプルなフォルムにポップな遊び心が効いています。
鹿の角のような形のオブジェ。ガラスに対する既成概念を覆させられます。
水に溶け込むインクのような波紋の、繊細な色模様が美しいガラス皿。

辻野さんのくらし。日課の山登りに同行。

「ここは本当に周りに何もないんですよ」と、今回案内して頂いたのはあえて店などではなく、犬の散歩も兼ねてほぼ毎日登るという槇尾山。槇尾山はトレッキングのコースもいくつかありますが、辻野さんが歩くコースは、家から歩くと往復で約2時間ぐらいのコース。でも今回は「山に登り慣れてない人なら、わりと無言になるかも...」ということで、途中までクルマで行くことに。

[槇尾山グリーンランド]は、展望台まで登りは約20分ほど。途中みかん畑があったり、少し紅葉が色づき始めていたり、自然がすぐ手の届くところにあります。
比較的広くて整備された道ではあるものの、ひたすら登りが続き...(実際、みんなちょっと無言に)。
芝生公園でちょっと一息付くと、最後の展望台までラストスパート、一気に階段を登ります!

「毎日このコース登ってるんですか? すごいなぁ...」

辻野さん「天気によりますが、夜更かししなかった翌朝はたいがい登ってますね、犬と一緒に。犬の方が元気で、坂道や階段も登ったり降りたりしてはしゃいでます」

頂上の八ヶ丸山展望台は標高が422m。
大阪湾が一望できるパノラマが広がります。
望遠鏡から覗くと、関西空港のターミナルや富田林のPL 教団の塔まで見渡せます。

辻野さん「天気が良ければ淡路島も見えるんですけどね。今日はちょっと霞掛かっていますね」

「空が近いですね。緑も」

たった20 分ですが、全く違う世界が広がっていました。都会の夜景とはまた違う、清々しい美しさ。そして秋らしいちょっとヒンヤリした空気も気持ちいい!

みんな暑くなって上着を1枚脱いでいました。

下りは長いローラーすべり台でショートカット。
意外とスピードが出て大人も楽しめます。

「健康のため...」と辻野さんは言うけれど、毎日の山登りから辻野さんが心と身体で感じたことが[fresco]のガラス工芸の作品にも表れているような気がします。

[fresco]のガラスには、雲で霞んだ空や紅葉で色づく葉っぱの色など、どこかで見たような自然の色が多く使われています。具体的に意識しているわけではないけれど、今回、実際に吹きガラスの体験もしてみた後に[fresco]のガラスを改めて見ると、四季折々の山の表情や空の色に見えるような...。空間の中で主張しすぎず、静かに調和するフォルムや色が生まれるのは、この工房のある和泉市の山裾の環境があってこそ、とみんなどこかで感じていたようです。

  • 槇尾山の展望台から大阪市内を見渡しながら。関空のターミナルまで大阪湾を一望できます。
  • 大阪平野を見渡す想像以上の絶景に、みんなしばし時間を忘れて見入ってしまいました。
  • 日課の槇尾山登りも、いつもの犬との2人きりではなくて、この日はわいわい賑やかに。
  • 下りは急なローラーすべり台で。スタッフの一人ははしゃぎすぎて、すべり台でお尻を擦りむいてしまいました....(恥)

[fresco]の前には樹木の緑に囲まれた池が広がる。バス釣りもできるそう。手前の樹にはみかんがなっていました。

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