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grafが近畿2府4県を旅して考えるきれいなくらし

09.10.21

Chapter.1 片桐さんに案内してもらいながら、自転車でめぐる堺の街。

この日の集合は南海高野線の堺東駅に9:30AM。
滋賀県から冨田酒造の冨田さんも南大阪初体験で合流です。
今回はみんなで、堺の伝統産業でもある自転車で堺の街をまわることに。
堺東の駅前の観光案内所で、みんなそれぞれに好きな自転車を選んで出発です。

堺東観光案内所でレンタサイクルを借りて、いざ出発!

[かん袋]の名物・くるみ餅。右は夏仕様の冷やしくるみ餅。氷の下にくるみ餅が現れます。

まずは堺東駅から自転車で南西に走ること約15分。
堺銘菓の1つ、くるみ餅を食べに[かん袋]へ。
鎌倉時代末期から続く老舗で、商品はくるみ餅のみ。
緑色の餡の中に白玉が入った優しい甘さと独特の風味の和菓子です。
その餡のレシピは一切、公開されていないそうですが、地元の人にとっては幼少の頃からの馴染みのある味。
grafのメンバーほとんどが[かん袋]のくるみ餅は初体験。
この日は、店内でしか食べられない氷くるみ餅を注文しました。

くるみ餅に舌鼓を打つ片桐功敦さんとgrafのみんな。

「氷と食べても餡が水っぽくならない!」
「これはヤミツキになる食感」
と、朝のおやつタイムを満喫していると、ここで待ち合わせをしていた片桐さんが登場。

片桐さん「おはようございます。ようこそ堺へ。今日はスケジュールがタイトですがよろしくお願いします。人数は置田君から聞いていたものの、やっぱり大人数ですね」

「そうなんです。この人数でチャリで走っていると、ちょっと異様です(笑)」

ギャラリー[Oogi]のオーナーの井出桂子さん(右)と片桐さん。「堺クラフトフェア」がきっかけでお知り合いに。

軽く自己紹介を済ませ、[かん袋]から歩いてもすぐの器のギャラリー[Oogi]へ。
オーナーの井出桂子さんがセレクトする白と黒の器が、真っ白い無機質なギャラリーの空間の中で凛と映えます。

片桐さん「井出さんとは、10/31、11/1に大仙公園で開催予定の『灯しびとの集い~堺クラフトフェア』がきっかけで知り合って。ちょうど贈り物を選びたいと思ってたので、お店に来られてよかったです」。
と、多治見在住の作家、横山拓也さんの器を2脚、お取り置き。同じ粉引きの白い器ですが、大きさも形も少し異なり、2つ並べて見ると存在感が倍になる感じ。

[Oogi]に展示されていた作品。オーナーの井出さんのセレクトによる器は、シンプルの中に温かみのある逸品が並ぶ。

片桐さん「これは向付とかに使うものですか? 食器としてだけでなく、花を生けても素敵だと思います」

井出さん「そうですね。この器は『スープまわり展』で出していたものですが、片桐さんがおっしゃる通りお花を飾ったり、形が形なので、使うのが楽しい器だと思います」

置田さんもモダンな印象の磁器を購入しました。

『灯しびとの集い~堺クラフトフェア』は、和泉市の吹きガラスの工房[fresco]のオーナー兼作家の辻野剛さんが実行委員長を務め、grafの代表の服部滋樹さんも選考委員として参加する、堺で初めての試みとなるイベント。片桐さんは、10/31に、会場内の高林家住宅(重要文化財・通常は非公開)で、生け花のライブ展示をする予定です。

かん袋

大阪府堺市堺区新在家町東1-2-1
TEL/0722-33-1218
営業時間/10:00~17:00(売り切れ次第終了)
火・水曜休み
http://www.jin.ne.jp/kanbukuro/

Oogi(オオギ)

大阪府堺市堺区少林寺東町1-1-27
TEL/072-221-4004
営業時間/11:00~17:00
日・月・火曜休み
http://sqgrn390.exblog.jp/

『灯しびとの集い~堺クラフトフェア』

10/31(土) 11/1(日)
大仙公園(堺市堺区)にて
http://tomoshibit.exblog.jp/
片桐さんの生け花展示は10/31(土) 14:00~(約90分)
参加費500円、先着100名(参加方法についてはHP参照)

[本願寺堺別院]にちょっと立ち寄り。堺市内最大の木造建築で「北の御坊」とも呼ばれ、明治の廃藩置県の際には堺県庁として使われていた、大阪府指定史跡。

続いて向かうのは、お香のお店[薫主堂]。
阪堺電気軌道のチンチン電車が行き来する通りから、商店街や寺が密集するエリアを北上。堺最大の木造建築である[本願寺堺別院]や、かつて住職が与謝野晶子と交流があったという[覚応寺]、国内で唯一現存する江戸時代の鉄砲鍛冶工場[旧鉄砲鍛冶屋敷]など、趣のある古い家が並ぶ旧街道を、自転車で駆け抜けて行きます。

[覚応寺]の中庭にある与謝野晶子の歌碑。かつての住職・河野鉄南は、晶子と鉄幹を引き合わせたことで知られ、晶子の命日に白桜忌が開催される。

[薫主堂]は、明治20年の創業より、天然の香原料と昔ながらの技法にこだわり、3代に渡ってのれんを守り続けて来た線香の老舗。
店の前に立つだけで、フワッといい香りを感じることができます。
店内には、高級な白檀を使い、独自に調合した仏前にあげるお線香をはじめ、暮らしの中で気軽に香りを楽しむ『花時代』というバラやスミレのお香など、ここでしか買えないお香がずらり。こちらのご主人で、堺ではただ1人の線香マイスターという北村欣三郎さんにお話を伺いました。

「堺が線香発祥の地なんですか?」

北村さん「線香そのものは、中国で始まったと言われていて、日本に製法が伝わったのは16世紀末頃の天正年間。南蛮貿易の拠点だった堺に、原料となる香料が持ち込まれ、日本で初めて線香が作られたのが、ここ堺だと言われています」。

片桐さん「線香ができるまでは、沈香や白檀といった香木や丁字、桂皮などの漢方薬(生薬)を直接たいていたんですよね。たしか織田信長が正倉院から小刀で切り取って持ち帰った『蘭奢待(らんじゃたい)』も香木ですよね」

木造の日本家屋の店内に並ぶ[薫主堂]の商品の数々。高価な伽羅から沈薫、香木、安価な匂い袋まで。

北村さん「そう、蘭奢待は沈香という木です。織田信長や松永久秀も切り取ったとされ、権力の証しみたいなものですよね。沈香の中でも高級なものを伽羅(きゃら)と呼び、これは今でも1キロ1千万円ぐらいで取引されています」

「い、いっせんまん!?」

「そんなに高級とは知りませんでした。こちらは香木のセットですか?」

北村さん「そうです。香炉をお持ちでなくても、湯のみや小鉢などで香木を楽しんでもらえるような入門編のセットです。歩割白檀と香炉灰、銀葉などが入っていますので、すぐに使えます」

「これ、使ってみます。和のアロマの歴史もおもしろいですね」

「私も。香道に前から興味があったので。とりあえずこの入門編から」

[薫主堂]の北村さんご夫妻。3代目になられるご主人の北村欣三郎さんは堺でただ1人の線香マイスター。

片桐さん「うちの母は、お茶の席でいつも[薫主堂]さんのお香をたいているんです。たしかこのパッケージだったと思います」

北村さん「片桐さんのお母様は沈香がお好きでよくご購入頂いていますよ。この香りは気を鎮めるので、お茶席でたかれると効果的です。だからお茶をされる方はいろいろなお香を持っておられます。うちのお香はお寺でもよく使って頂いていて、喜んで頂いています」

川西さんと冨田さんは白檀の香木セットを購入。
他のメンバーも自宅で使うため、お香や線香などを買い、お店を後にしました。

薫主堂

堺市堺区北半町西2-1
TEL/072-232-2549
営業時間/9:00~18:00
日曜休
http://www.kunsyudou.jp/

午前中、最後に訪れたのは、花鋏や植木鋏など、主に植物に用いる鋏を作っている鍛冶屋さんの[佐助]。片桐さんもこちらの花鋏を愛用しているそう。江戸末期の1867年に創業、初代は鉄砲鍛冶でしたが、より実用的な物づくりを、とその技術が活かせるハサミの製造を始めて、現在では包丁や小刀、文鎮なども製造しています。

木の看板が掛かる店構えや火作りをする作業場などは、昔ながらという言葉がぴったりで、まるで映画のセットか一昔前にタイムスリップしたような雰囲気。伝統工芸士としては唯一人の鋏職人である5代目の平川康弘さんに、早速、火作りの作業の様子を披露して頂きました。

火作りでは、異なる性質の2種類の鉄、軟らかい地金(じがね)に硬い刃金をたたき伸ばし、鍛え合わせます(刃金付け)。足を動かして炉に空気を送り、火加減を調節しながら、じっくりと鉄を温めたら、金槌で「トンテンカン、トンテンカン」とリズム良く打っていきます。

見学していた我々の近くまで、火花が激しく飛んでくることもあり、至近距離で見ていると、音も火花もすごい迫力です。

  • [佐助]の平川康弘さんの「火作り」の作業。炉で高温で熱した刃金を金槌でリズム良く打って整形する。
  • 江戸末期の創業以来、5代目になる平川康弘さんは伝統工芸士の中では唯一人の鋏職人だそう。

平川さん「うちの鋏の特徴は刃の裏面のプロペラのような微妙なねじれ。このねじれによって2枚の刃が食い込んで重なり、切れる仕組みになっています」

実際に[佐助]の鋏で紙を切ってみると、その切れ味は普段の鋏の感覚とは全く別もの。おもしろいほどスパッと切れます。

[佐助]さんの鍛冶場に並ぶ道具。江戸末期の創業だけあって、どれも使い込まれていて年期が入っています。

片桐さん「[佐助]さんの花鋏は、太い枝でも半分ぐらい切ったら、後は鋏が勝手に仕事をしてくれる感じなんです」

さらに平川さんは、自然のサビを表面に施すサビ出し仕上げや、花鋏の肩と呼ばれる部分に金や銀をはめ込む象嵌装飾、表面に乾燥させて粉にした漆を焼き付ける乾漆塗仕上げなど、単なる機能美だけではなく、美術工芸的な鋏作りにもチャレンジし続けているそうです。

[佐助]の生花鋏。乾燥した漆の粉を焼き付けた乾漆塗仕上げで、鋏の肩の部分には純金の象嵌装飾が施されている。

平川さん「象嵌はジュエリーの学校で勉強して、漆も専門の先生に習いました。鋏を単なる工具ではなく、工芸品のレベルにまで持っていきたいという想いからです。日本で鋏というと、ペンチやハンマーみたいな工具の扱いなんですよね。でもフランスで刃物の個展をした時、予想に反してほとんど完売したんです」

片桐さん「[佐助]さんの鋏は、別の鋏と並べると、その美しさが一目瞭然です」

「それって日本の技術の高さを認めてもらえた証拠ですよね」

平川さん「そうなんです。それがきっかけで、このまま伝統を守るだけで留まっていたらだめだと思って、5年間、奈良の刀鍛冶に弟子入りをして、さらに技術を高めようと思ったんです」

最初は火作りの迫力に圧倒され、鋏の美しさとその切れ味に全員思わず息をのみましたが、最後は「伝統を引き継ぐだけではなく、さらに進化させる努力を惜しまない...」、そんな平川さんの志の高さにgrafのみんなも深く感動していました。

佐助

堺市堺区北清水町3-4-20
TEL/072-233-6812
営業時間/10:00~19:00
月曜不定休
http://sasuke-smith.com

[佐助]の平川さんご夫妻(後列の両端)と片桐さんと。後列の右から2番目の女性はgrafのスタッフとも以前から顔馴染みで[佐助]さんで補佐をされていることを聞いて、みんなびっくり!

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