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grafが近畿2府4県を旅して考えるきれいなくらし

09.06.24

Chapter.1「熱い想いとともに自家有機野菜にこだわる、大阪・能勢町のレストランオーナー、尾崎形輔さんを訪ねて。」

大阪・能勢町の尾崎さんのレストラン[エッセンドヴェッキオ、エ ヌオーヴォ ナチュラ・エ・アリア]の前で、今回参加のgrafメンバー。

今回は過去最多の6名のgrafメンバーが参加しての日帰り旅。
「食」がキーワードでもあるため、grafビル2Fの[graf dining:fudo]のシェフ、堀田裕介さんも初参加です。残念ながら訪問先のレストランが改装の真っ最中のため、お昼はお弁当を持参することに。
堀田さんと川西さんのコンビが前日から張り切ってお弁当の準備をしてくれました!

中之島のgrafビルを出発して約1時間で、周りは山。畑や田んぼも広がっています。
同じ大阪とは思えないのどかな景色の中に、尾崎形輔さんのレストラン[エッセンドヴェッキオ、エ ヌオーヴォ ナチュラ・エ・アリア]はあります。
この長い名前は改装後の新しい店名で、前身は'00年に尾崎さんのお母さんが始めた[しゃらんどらーは]という野菜を主役にしたイタリアンレストラン。
その頃からずっとお店で使う野菜は、お店の近くにある自家有機農場で作られたもの。
それ以外は絶対に使いません。尾崎さんのお父さんの尾崎零さんは30年以上も前に有機農業を始めたその世界の第一人者で、今では全国に消費者がいる[べじたぶるはーつ]という農場の経営者。
そのお父さんとは別に、尾崎さんは自分の畑で農作業に取り組んでいます。
「自分達の手でできる物は可能な限り自分達の手で」。
そのコンセプトを引き継ぎつつ、お店の内装からインテリア、ピザ釜まで、全てを一から自分で作り、新しい店づくりに挑む尾崎さん。
ストイックすぎるとも感じ取れるその姿勢の背景には、尾崎さんの強い意志がありました。

自らの有機野菜の畑を見ながら話す尾崎形輔さん(左から3人目)とgrafのメンバーたち。

「今度はえらく長い店名ですよね」

尾崎さん「そう、長いでしょ(笑)。僕が3年前にここに戻って来て店に携わるようになり、店の主旨が少しずつ変わってきてるんです。前の名前のままだと、どうしても父親の農場のイメージが強くて、僕は父とは少し違うやり方をしたくて変えました。『ナチュラ・エ・アリア』は自然と空気、『エッセンドヴェッキオ、エ ヌオーヴォ』は古い物は新しい物だ、っていう意味。通常、イタリア料理店はトラットリアとかピッツェリアが多いけど、僕は料理の修業は全くしていないし、イタリアンのシェフの方とはおそらく全然別のところに発想があると思うんです。あと、街中から農業の研修でやって来る若い子たちって新しいモノには驚かないんですけど、うちの畑で使う鍬とかの道具に衝撃を受けたりするみたいで。確かに昔のモノはすごいシンプルなんですけど、むちゃくちゃ理に適ってるんですよね。それで、おっコレはいい!と思いまして」

「尾崎さんは、ここに帰って来る前には何をされてたんですか?」

尾崎さん「音楽をやってたんですけど、夕方から起きるみたいな生活で...。当時の僕を知る知り合いは、テレビや雑誌で、地産地消だのフードマイレージだの環境だのと熱く語る僕を見て、一体世の中何が起こったんだと、そりゃもうびっくりしています(笑)」

「おもしろいなぁ。環境への意識とかは昔から少しはあったんですか?」

尾崎さん「全くなかったです。ちなみに包丁も握ったことがなかったんです」

「えー! スイッチがすぐ変わったんですか?」

尾崎さん「たまたまそこにピザ窯があったから良かったんでしょうね。やり始めた当時は、『料理は修業をしないと絶対にダメな世界だから行った方がいい』といろんな人に言われましたけど。でも、焼き上がる時とか、何か瞬間に感じるものがピザにはあって...。お客さんに見られながら『あ~、ライブと一緒やな』と思うようになって。母が作った以前の窯は外にあったので、店内ではクラシックを流しつつも、外では思いっきりレニー・クラヴィッツとか掛けてました(笑)。これがすごく楽しくて!」

「僕らも工場で家具を作ってる時は、ボリュームガンガンに上げてロックとか掛けてますよ。なんかモノ作りってリズムがないと作りにくいというか、静かだとストイックになれないし。テンポも必要だし、音楽がないとラボはだめかな、と僕も思います」

自らの手で作り上げたピザ窯の前で語る尾崎さん。後ろはgrafの服部智樹さん。

尾崎さん「でも最近では音楽なしでも気持ちが高揚する、そんなイク術を覚えました(笑)」

「おっ、上いきましたね(笑)」

尾崎さん「特に以前のピザ窯のあったところは、真冬は午後2時とか3時でもものすごく寒いんです。でもめちゃくちゃキレイな光が差してくるんです。そういう時とかは瞬間でイッテしまいますよね。たまらなく気持ちがいいです。そんな時って気持ちがフラットだから、焼き上がるピザもとてもカッコいいビジュアルで窯から出て来てくれるんですよね...」

「見てみたい~、食べてみたい~!!」

尾崎さん「今度の店では、お客さんに料理とだけ向き合って欲しいと思って、あえて窓をほぼ無くしたんです。田舎でこういう閉鎖的な空間って珍しいんですけど」

「キッチンには大きい窓がありましたよね」

これが作り方をインターネットで調べて一から自分で作り上げたというピザ窯。

尾崎さん「あれは僕とスタッフが気持ちよく仕事をするため。新しいピザの窯もインターネットで調べて自分で作ったんですが、キッチンもしかり。フランス料理の人たちってストーリーを大切にされている人が多いから、敷地内の一番良い場所に厨房を作るんです。料理を作る人間が四季を感じたり、テンション上がらないと美味しいものができないので」

「[graf dining:fudo]の厨房もそうです。川沿いの窓際に厨房があって、調理スタッフは川を見ながら働いています。それにしてもあの新しいピザ窯、ネットで調べただけで作れたんですか?」

尾崎さん「そうです。ブログで事細かに自慢げに書いてくれている人もいたりして(笑)。ネットがなかったらできませんでした。最初は全然違う形の予定だったんですけど、最終的にイタリアのナポリのピザ窯に近い形に落ち着きました。やっぱりイタリアの人達ってセンスあるんですよね。結局4回やり直して半年掛かりました。作ってはなんか違うと思って壊し、やり直し...」

庭にかかっていた、お母さんがやっていた頃の[しゃらんどらーは]の看板。

ここで少し、前身の[しゃらんどらーは]について...。

もともと尾崎さんのお母さんが、有機農業で栽培した野菜で消費者に配りきれない分を、肥料として土に返すだけでなく、何か違った形で提供したい、とジャムやソースなどの保存食として残すことを始めました。
その食材をギャラリーなどで置いてもらうようになり、そうした縁で知り合った篠山の陶芸家の方がたまたまピザの窯も作る人で、その方に勧められて作り方を教えてもらって、ピザ窯を作ったそう。
お母さんが手掛けてきたジャムなどの保存食は、今後も[ラーハ・ラーハ]という物販部門として立ち上げ、お店の中にももちろん置かれます。 お店が改装して店名や内装、そして新しい窯で焼かれるピザの食感は変わりますが、「自分達で作ることが可能なものは、何があっても自分達で作る」という強固なコンセプトは変わりません。尾崎さんたちにとって「買う」という行為は、ずばり手を抜くこと。畑の道具も使い古されたものばかりですが、たとえ作業効率が悪くてもそれを使う。
「新しいものを使うと、薄っぺらいものしかできないでしょう。あえてちょっと困難なものばっかり選択するのがうちのスタイルかもしれません」
と尾崎さん。

自家製のベーコンもそう。豚バラ肉を、糊を使うのではなく、1塊ごとに爪楊枝を差して自然の力でくっつくようにします。
途方もなく手間の掛かる作業ですが、その面倒なやり方を選択するのが、尾崎さんたちのやり方、思想です。 自ら栽培した有機栽培の野菜しか使わないので、大変なのが穫れる野菜が少ない4月と10月の端境期。
11種類の季節野菜を薪窯で焼く、シンプルだけど人気のメニューがあるんですが、その時期だけは畑の作物だけでは無理で、山菜を穫りに行ったり、自生している野草の中から食べられるものをお母さんに教えてもらったりして、試行錯誤しながら用意しています。

「自然界に普通にあるものを自然の力で調理するっていうのが、うちのオンリーワンかな。『自家製です』というだけで胸をはれる時代だからこそ、絶対に嘘はつきません」。
そんな強い想いがこもった料理だから、お客さんにも真っ直ぐに向き合って欲しい、素材のおいしさを素直に感じて欲しいと尾崎さんは思っているのです。

  • これから畑に出掛ける尾崎さんご夫妻。身重の奥さんは6月初旬には第1子をご出産。
  • 尾崎さんのお店のトイレに貼られていた貼り紙。トイレにも、尾崎さんの暮らしに対するこだわりが見える。

30年前から有機農業を実践し、今では第一人者として認められている、尾崎さんのお父さんの尾崎零さん。

お店でお話を聞いた後、お店の近くの畑に案内してもらいました。
尾崎さんの畑と、お父さんの尾崎零さんが耕作されている農場[べじたぶるはーつ]では、栽培している野菜の種類も違います。
[べじたぶるはーつ]では毎年有機栽培を学ぶボランティアの研修生を受け入れており、栽培された野菜は全国の消費者会員に届けられています。
尾崎さんにとって畑は「ポジティブ思考になるための勉強の場所」。
畑で生まれるアイデアも少なくありません。
「楽しく作ると野菜はおいしくなる」、そんなウソのようなホントの話を体験として感じている尾崎さん。
特にトマトに対しては特別な思い入れがあるようです。

  • お父さんの尾崎零さんの有機農場[べじたぶるはーつ]の野菜は、全国の消費者に届けられている。農業に対する思想は真摯で情熱的だ。
  • お父さんの農場ではボランティアの研修生を受け入れている。この日も、農業を学ぶために鹿児島からやって来た若者たちが作業していた。

「楽しく作ると野菜は美味しくなる」。いかに毎日、愛情を注いでやれるか...。野菜も人間と一緒です。

尾崎さん「父親の畑では生食用、僕の畑では加工用やいろんな小さい甘いトマトなど、10種類ぐらい作ってます。トマトは大体7月から11月ぐらいまで穫れるんですけど、本当に美味しいのは1週間ぐらい。8月後半から9月前半のトマトはびっくりするぐらい甘いし、信じられないぐらいキレイです。同じ赤でも全然違う。その頃のビニールハウスの中って、何十万個の赤い粒がブワァーっとできるんです。ミラーボールみたいにキラキラ輝いてものすごくキレイ。そんなトマトは震えるぐらいおいしいですよ。多分品種とここの気候が合ってるんだと思います」。

「聞いているだけでおいしそう!」

尾崎さん「その約5ヶ月間に穫ったトマトで1年分のトマトソースを作って保存瓶に入れて、ストックしています」

お店の棚に並べられたトマトソースの瓶。7~11月に収穫したトマトで1年分のトマトソースを作ってストックする。

「そういえば、店内にいっぱいありましたね、トマトソースの瓶が」

尾崎さん「でも一昨年は僕たちが判断を誤って、トマトソースが1週間だけ無くなってしまったんです。お客さんには申し訳なかったけど、仕方がないんで、その1週間はチーズのピザだけで営業しました。うちのピザはちょっと片寄っていて、ナポリピッツァの基本といわれる2種類しかありません。中でもマルゲリータは、フレッシュバジルしか使わないので、バジルが穫れる6月後半から10月ぐらいまでの時期だけしか焼けないんです。他の時期はマリナーラだけです。だから、マルゲリータのありがたみが分かりますよね。トマトソースの赤とバジルの緑、モッツアレラチーズの白の3色の感覚はすごく難しい。本当にイタリア人ってセンスあるなぁ、って感じます。バジルを乗せる位置で全然見た目が変わるんですよね。毎回乗せるのに緊張します。マルゲリータを焼いている時が一番楽しいです。でも時期が限られている...、その不自由さもいいよなって思うんです」

ここが尾崎さんの畑。有機栽培で育てている野菜は、生で食べても新鮮で濃厚な味わい。

「もうマルゲリータの口になってきた」
「絶対に食べにきます!!」

尾崎さん「おいしいですよ、うちのマルゲリータ。バジルの香りから違いますからね。野菜は収穫した瞬間にまずくなっていくけれど、ウチはこの環境にあるので、あまり手を加えないんです。僕自身、買った野菜で調理しても、なんにも楽しくないと思います。ゼロから作っているから楽しい。それで伝わるのかな」。

一緒に畑を周りながら、生で食べられる野菜を少し摘ませてもらいました。
コールラビ、スティックセニュール、カタローニャというイタリアのレタス、アフリカのアイスプラント...。尾崎さんの畑では、耳慣れないヨーロッパ品種の野菜もたくさん植えられていました。その場で食べる野菜はどれも味と香りが濃く、個性的。イタリアの野菜は、そのままだと苦いけど、オリーブオイルを掛けて食べると苦みがうま味に変わるものが多いんだそう。

尾崎さん「これは普通のルッコラよりも、味が強い『ルッコラセルバチカ』。どうぞ食べてみて」

「確かにゴマ味が強いですね。辛みもあって独特」

尾崎さん「じゃあ、スナップエンドウをみなさんで収穫していただけますか?
後でバター炒めにするので食べてください」

たわわに実ったスナップエンドウを収穫。お昼にバター炒めで。
収穫したスナップエンドウの実。さやにパンパンだ。
あまりに美味しそうなのでスナップエンドウを生のままパクッ。生ではあまり食べない方が...。

持ってきたお弁当を広げて、お店の庭で楽しくランチ。ビオワインも開けて頂いて、ピクニック気分です。

畑でいろんな野菜を収穫してサラダにして、お弁当と一緒にお店の庭で食べることになりました。
grafの堀田さんと川西さんが作って来たお弁当のメニューは、雑穀米、梅干し入り、ふりかけのおにぎり、卵焼き、無農薬野菜のサラダ、根菜のカポナータ、うな重などなど。見た目も鮮やかで美味しそう!
収穫したばかりの野菜のサラダとスナップエンドウのバター炒めも一緒に。
尾崎さんにビオワインを開けて頂いて、飲めない人は川西さん特製の水出し番茶で乾杯です!

尾崎さん「さっき畑で穫った野菜のサラダは、ウチのこの自家製ドレッシングでどうぞ」

さっき畑で収穫したスナップエンドウをバター炒めにしてもらいました。野菜のサラダには、自家製のドレッシングをかけて。

「ドレッシングなしでも、食べてみたいです」

尾崎さん「そうですね、食べ比べてみてください。葉っぱの味がスパイスになるものが多いのでそのままでもおいしいですよ」

「本当だ! 苦みとか辛みとか普通のサラダより味が濃いです」
「そういえば、さっき畑で出会った尾崎さんのお父様、なんだかすごくオーラがありました」

尾崎さん「父が31年前にこの能勢町に来たときは、『有機栽培』という言葉も全く一般的ではなくって、変わり者扱いされていたらしいです。そんな時代に、父は大規模耕作ではない農業のあり方を開拓した第一人者だと思います。農家の跡取りとか地主でないと農業はできないとされていた時代に、『最低これだけという小規模でも自立できますよ』って父が実践して示すことによって、新しい道ができた。特に拡大、拡大の時代に30年前からそれを実践しているのは、なかなかカッコいい。ちゃんと流されない生き方を持ってるんですよね、父は。僕がこれからの30年間、同じ考えを持ち続けられるかと考えると、尊敬しますね」

「確かに。30年はすごいですよね。今の尾崎さんの年齢ぐらいで始められたんですよね。尾崎さんも店を新しくして、何か区切りになったんじゃないですか?」

尾崎さん「そうですね。父の農場に研修に来る人たちでも、種のまき方や畑の管理といった有機農業の最低限のノウハウならば1年もあれば習得できます。でも僕は、もっと楽しんでやることを教えてあげるんです。そうすると野菜は絶対においしくなって、その野菜を手にした人にも伝わるし、自分も変われる...、そういうことを店でも伝えていきたい。それが今度の店のコンセプトでもあります。店づくりも、最初は改修するところだらけで頭を抱えていたけれど、やり始めると楽しくなってきてスイッチが入り、いつの間にかゴキゲンでやってる。結果的に人に依頼したのでは実現できなかった空間にはなったと思います」

「うんうん、分かります」
「オープン楽しみです。みんなで来ます、マルゲリータ食べに!」

8月~9月のトマトが最も美味しい時期にマルゲリータを食べに再訪することを約束。今から楽しみです!

太陽の下で約1時間、美味しい野菜とお弁当を食べつつお話をしながらのピクニックランチはあっという間に終了。「また絶対食べに来ます!」と約束し、お店を後にしました。

Essendo vecchio,e` nuovo natura ed aria
エッセンドヴェッキオ、エ ヌオーヴォ ナチュラ・エ・アリア

大阪府豊能郡能勢町倉垣1897
TEL/072-737-0412
営業時間/11:30~15:30
水・木曜休
http://www.raaha.jp

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