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grafが近畿2府4県を旅して考えるきれいなくらし

09.05.27

Chapter.1「室生、切り絵作家の江本幸雄さんを訪ねて」

室生寺の国宝の五重塔の前で、grafの2人と冨田さん、大森さん。

取材日は4月中旬のある平日。あいにくの雨模様の中、集合場所に傘を持参で集まって来たのは、grafの男性メンバー、荒西さんと置田さん、この企画の第1回目の取材でお世話になった滋賀・木之本の[冨田酒造]の15代目・冨田泰伸さん、そして奈良の中山間地区で「工房街道」の町おこし事業を展開している大森淳平さん。
今回は男ばかり4人の旅となりました。

まずは室生を訪れたついでに、世界遺産の室生寺にちょっと寄り道。
ここは、女人禁制の高野山に対して、女性でも参拝できたことから「女人高野」とも呼ばれています。
弘法大師が一夜にして建立したと伝承される国宝の五重塔は、屋外にあるものとしては日本最小。
初夏に咲く約3000本のシャクナゲや秋の紅葉でも有名です。

訪れた4月21日は、室生寺を築いたと言われる弘法大師の命日の法要「正御影供(しょうみえいく)」が行われていました。
鮮やかな衣装に身を包んだお坊さんや可愛いお稚児さんたちが本堂までお渡りをする姿は、華やかで実に神秘的。カメラを構える観光客も多かったです。

  • 室生寺で行われていた、弘法大師の命日の法要「正御影供」の参列。
  • 雨の中、室生寺の参道を色鮮やかな袈裟を着た僧侶の参列が続く。

20年前にこの地に移住して来て地域の活性化に積極的に取り組んでいる切り絵作家の江本幸雄さん。

帰り道で名物のおいしそうなよもぎ餅を買い食い。
クルマの中で食べながら、室生の切り絵作家、江本幸雄さんの工房へ向かいます。

江本さんがこの室生に廃屋を購入したのは32年前。
自らこつこつ手直しし、20年前に移住して来ました。
当時はまだ室生村で、江本さんの転居で3人の子供が転入したことにより、村の小学校の複式学級化(児童減少に伴い複数の学年をまとめて授業を行う方式)が防がれたんだそうです。以来、大阪まで片道2時間の通勤を余儀なくされながらも、室生では地域活動に積極的に参加。
自宅の一角を[きりえ空間]と称してギャラリーに、子供たちのためにはログハウスの図書スペースを開放しています。
自宅は急な坂道を上ったところで周りは山。高山植物など珍しい花も育てていて、夜になると庭にムササビが遊びに来たり、野生の鹿が玄関先で「こんばんは」なんてことも...。

江本さんの自宅を訪れた今回のナビゲーターの4人。
江本さんの自宅の一角の[きりえ空間]と称されたギャラリー。
かつては廃屋だったのを購入し、自らの手で手直ししたという、江本さんのご自宅。

もともと趣味で始めたという切り絵は、日本国内だけでなく、フランスやカナダ、中国など海外でも展示され、NYのギャラリーから声が掛かったこともあるという腕前。植物や動物などをモチーフとした作品は見れば見るほど精妙で、力強さと優しさが共存する独特な雰囲気です。
敷地内のあちこちに作品が展示されているほか、地域の看板なども。
どれも一目で江本さんのものだと分かります。

江本さんの切り絵作品は、日本のふるさと的風情や自然が感じられ、海外でも高く評価されている。
お父さんゆずりの切り絵の作品も展示されている。
動物をモチーフにした、江本さんのご家族の切り絵の作品。

そして2007年には廃校になった小学校跡を、文化芸術活動体験交流施設[ふるさと元気村]として、地域の人たちと共に復活させたのです。
そこでは陶芸や草木染めの染織家(江本さんの奥さんの佐代子さん)のアトリエに加え、竹工芸、一閑張り、伝承折紙などの教室(アトリエ)を始め、定期的に料理教室や茶道、墨絵など幅広い講座が開校されています。

「おはようございます、江本さん。今日はよろしくお願いします」

江本さん「ようこそお待ちしておりました。道中お疲れでしょう。家内がさくら餅と桜湯を作ったんで、まずゆっくり召し上がって下さい」

「手作りのさくら餅って初めてです」

江本佐代子さん「このように毎年桜の花を満開の少し前に摘み取って塩漬けにしておくんです。桜湯はこれにお湯を注いだものです」

「本物の桜の花の色ですね」
「甘すぎず、素朴ですごくおいしい!桜湯もさっぱりしてお茶代わりにいいですね」

「この辺りはもともと芸術家が多かったんですか?」

江本さん「いやいや、私はもともと自然が好きで、ここで切り絵がしたくてやってきたんですが、私らが引っ越してきた20年位前は『芸術ってなんやねん?』という地域でしたよ。すぐに仕事にしようと思っても、売れる市場はないでしょう」

「僕らも大阪でギャラリーをやっているんです。販売することがメインではありませんが、現代アートの作家さんも注目はされるんですが、作品はなかなか売れないですね」

江本さん「そうでしょう。そうなると作家さんもギャラリーも赤字になってしまう。
だから絵画など芸術を活用して、せめて生活ができるような仕組みができないか、と村をのんびり歩きながら、みんなの知らない民家のギャラリーを訪ねたり芸術体験できるエコツアー『里めぐり』をスタートさせたんです」

「なるほど。その延長があの廃校跡の[ふるさと元気村]なんですね」

江本さん「そうです。子供が減って小学校も幼稚園も廃校になり、バスも来なくなってしまいました。でもそれなら逆にバスを走らせたい、若い人が帰ってきたい、と思えるような環境に変えていったらいいんですよ。
仕事がないからと出て行ってしまった若者も、成長して子供を連れてここに帰って来た時には、自然の中で子供を遊ばせたりしてすごい喜ぶんですよ。ここは環境が良いから。都会にはない、この環境の良さを宝物として育てて行かなければならないと思うんです。
この良さを、地域に住んでいる人にも気付いてもらいたいんです。ふるさと再発見ですね。」

「なかなか住んでいる人は当たり前だと思ってしまうんでしょうね」

江本さん「自分が住んでいるところに、こんなに良いものがあるんや、と意識することも大切やと思いますよ。地域の人とそれを共有し合って動かないと、地域のコミュニティとして保たないと思います。廃校になった学校を活用して、そこから何かを発信すると、そこに地域の人も遊びに来る。何かしら元気に動いてると、そこにわざわざ行ってみたいと思うでしょ。その元気は誰かが起こさないとあかん。それを僕らがやってるんです」

大森さんによると、江本さんは「工房街道」の企画にも大変協力的で、モニターツアーでは[ふるさと元気村]に多くの人が訪れ、江本さんが講師となって切り絵の体験をしたんだとか。

大森さん「江本さんの影響が大きく、江本さんが引っ張っていくことでこの辺りの方々は外からの訪問者に対して、ウエルカムな雰囲気になっています。
ツアーでも一人一人に手づくりのお土産を用意されるなど、すごく手厚くもてなして頂いて。
だから何度も足を運ぶ人も多くいらっしゃいますよ。
江本さんのようにこの地域の良さを知り大切に守り育てていく人がいることが、過疎が進むこの地域を元気にする鍵だと思います。」

  • 江本さんご夫婦の[室生ふるさと元気村]を始めとする活動を紹介したチラシ。
  • 毎年春に、桜の花びらを摘み取って塩漬けに。これに湯を注げば桜湯に。
  • 江本さんの奥さんの手作りのさくら餅と桜湯。
  • 室生の街の活性化について話し合う、江本さんとgrafの荒西さん。

この地に移り住んで20数年。自然に囲まれて仲睦まじく暮らす江本さんご夫婦。

きりえ空間

奈良県宇陀市室生区下田口2730
TEL/0745-93-2370
http://www.geocities.jp/kiriekuukan/

ふるさと元気村

奈良県宇陀市室生区下田口1112
TEL/0745-93-4400

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