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grafが近畿2府4県を旅して考えるきれいなくらし

09.05.13

Chapter.3「幼少期の想い出~釣りをしながらのんびりと」

久住さんの幼少期の想い出

[淡路夢泉景]でお昼をご一緒しながら、お話しは久住さんの幼少時代の想い出に。
お父さんもおじいちゃんも左官職人という三代続く左官一家に生まれて、お父さんの久住章氏は、業界では知らない人はいないほどの、日本を代表するカリスマ左官職人。
そのスパルタな「左官教育」は、子供相手とは思えないほどだったとか...。

幼少時代は、カリスマ左官職人であるお父さんからのスパルタ教育の日々だったという。

久住さん「いつも学校から帰ったら、壁を塗らされてました。夏休みとか気が重たかったわ...。手伝うという感覚じゃなくて、『この部屋の分だけ、砂振るっとけ』とか、『押し入れの壁、全部塗っとけ』とか普通にノルマがあって。インチキしたらばれるし、めっちゃ厳しかった。
こわくて中学に上がるまでは、親父とよう眼を合わさんかったもんね。
漆喰のレリーフを作らされてたんやけど、漆喰に含まれる石灰はアルカリが強すぎて、手のタンパク質が溶けて指に穴が空くんです。
そこから血が噴き出しながらも作っていました。 毎日が"巨人の星"みたいな状態(笑)」

「すごい...。それは左官やりたくないと思っても仕方ないですよね」

久住さん「小遣いももらえなかったから、中学からいろんなバイトしてて。
それで高校の時、ケーキ屋でバイトしてね。
ケーキは上手く作れたから、一番給料も良かったんよ」

「そりゃ生クリーム塗らせたら、早いしキレイだし!(笑)」

久住さん「高校卒業したら、新しい店出すから来てくれって言われて。もしかしたら左官じゃなくて、そっちやったかなぁ(笑)」

そんな風に、今となっては笑いながら振り返る久住さん。
結局、ケーキ屋さんになるのはもちろんお父さんに反対されて、ヨーロッパへの修行の旅を勧められる。そこでガウディの建築に出合い、左官の道に。久住さんはヨーロッパで出合った、何百年、何千年と残る建造物の魅力に、きっと運命的なものを感じたんだと思います。

久住さん「今の建築の中にそう感動する建築ってないでしょ。どこか表層的で。
芯から出てくるもんって少ない。
その点では、先人の仕事の手法には驚かされることは多いですね。
昔の建築をやり変える仕事の時に、表面から見て多分こういう構造やろうな、と予想していたものが、内側を開けてみると、こんな方法でやってたんか、って思う時あるもんね。
おもしろいよね。
僕も100年後に見られて感動してもらえるような、後世に残る仕事をしたいと思う。
そのためにも職人として現場だけじゃなくて、ワークショップや個展など、いろんな提案はし続けるつもりです」

趣味のヘラブナ釣りでのんびりと

「年に休みは一週間ぐらいかな?」という久住さん。
grafの仕事もそうだけど、デスクワークやショップ以外に、内装や個展などは仕事の現場が全国各地となるので、必然的に移動が伴う。久住さんの場合、全てが現場仕事で、それが全国、いや全世界。天候に左右される場合もあるので、スケジュールの管理だけでも相当大変だと思います。
だけど、忙しい人ほどプライベートの時間も大切にしているもので、久住さんもしかり。久住さんの趣味はサーフィンと釣り。サーフィンは淡路島にシークレットのポイントがあるそうで、波がある時は少しだけ仕事を抜け出して行くことも。「昨日も波があって、よっぽど行こうかと思ったんやけどねぇ」と、サーフィンの話となるとまた違った表情に。この日は3月でも温かい日だったので、釣りに行くことに。 釣りにもいろいろあるけど、久住さんはヘラブナ釣り。目指す池に着くと、水際にイスを設置して、道具を定位置にスタンバイ。釣り竿を組み立てて、ものの5分でセッティング完了。次にビニールから何種類もの餌を出して混ぜ始める久住さん。

温かい日差しの中、久々にのんびりとヘラブナ釣り。

「さすが職人さん、準備も早いですねー! 餌を混ぜるところも職人っぽい(笑)」

久住さん「そう、この餌を混ぜるのが重要やねん。この餌がダメなら配合を変えてみたり」

「釣りを始めて長いんですか?」

久住さん「そやねー。子供の頃からやってた。磯釣りとか。ヘラブナは7、8年前からかな。でも最近は全然来てなくて...。昔は仕事休んでまでも行ってたのに」。

こうして温かい陽射しの中、雑談をしながらも餌を付け替え、また竿を投げ...。
そこに久住さんのご親戚の方がたまたま通られて、ローカルな会話も。
そういえば、久住さんのおじいさんも釣りがお好きだったとか。

久住さん「うちのおじいちゃんは50歳で引退して、池のほとりに茶室建てて、毎日釣りしてたみたい」

「50歳って早くないですか?」

釣りは子どもの頃から好きだったそうで、よく出掛けた。

久住さん「まぁ、おじいちゃんの場合は道楽でもあるんだけど。でも老眼になると、現役のようには無理やね。もちろん技術があるから仕事はやれるけれど、僕らが思うような細かいところはできないね。僕も一番いい仕事ができるのは、あと7年ほど、45歳ぐらいまでかなと思ってる」

この日は残念ながら釣れなかったけれど、久住さんも僕たちもゆったりとした時間を過ごせて、どこかスッキリ。忙しい時期って、家に帰ってきてもまだ仕事と同じペースが抜けなくて、妙に忙しく動いてしまうことがあるんですけど、こういうリセットする時間は必要だな、とすごく感じた1時間でした。

「また、サーフィン一緒に行きましょね」と、遊びの会話も交わしつつ、ここで久住さんとはお別れ。ほとんどのメンバーはみんな初対面でしたが、年代が近いこともあり、すっかり昔からの知り合いのような空気に。

帰りは温泉(淡路島には意外と温泉が多いんです)に寄って帰路へ。休日で温泉は大混雑でしたが、帰りの道路は渋滞もなくスイスイと。淡路島から見る明石海峡大橋の向こうの神戸や大阪の夜景が、自然に囲まれた淡路島とは対照的な都会の表情に感じました。

Fin
(取材/天見真里子)

grafからのメッセージ

久住さんを訪ねた今回の淡路の旅もまた非常に中身の濃い、でも淡路島らしいユルい時間もしっかり体験できた、マジカルなツアーとなりました。

まず圧倒されたのが工房での久住さん。
アナログな方法でしか作れないこだわりの材料、1つの現場のために何十枚と作るサンプル、さらに壁をどれだけ美しく見せられるかという技。
工房には現場での仕事を完璧にするための様々な要素がありました。

左官は時間を掛ければ美しく完成するというものではなく、早くできる職人の方が技術が高いと言われています。
久住さんはまだ30代なのに左官職人歴が長く、とても仕事が早いことでも有名です。
でもそれは、幼少時の英才教育や弟子時代の経験、そして自らの経験値と技術を上げるための地味な努力といった背景がしっかりあってこそ。茶室といった日本の伝統的な建築の修復作業ができるのも、ただ歴史や構造を勉強するだけではなく、一般の現場でその練習をこっそりと繰り返したんだそうです。

また一方で、いろんな分野で活躍している人とも繋がっており、自由な発想での作品を個展で表現したり、ワークショップをしたり、特に「職人/アーティスト」という枠に縛られない活動にも積極的です。

そのトータルが "久住有生"であり、我々は久住さんのスゴさと人間としての魅力にすっかり引き込まれました。と同時に、同じ物を作る職人として、その価値観や感性にも共感できました。例えば久住さんの「この土壁のヒビが、良い味なんです」という言葉。その風合いや味わいは家具に使う木にも共通するところがあります。一方で、土や藁など材料からこだわって作るところは、家具職人の世界で例えると「木を植えて育てるところから始める」ことで、ただただ尊敬の一言。そして自らの職人としての寿命を割り切って考えているところは、だましだましではなく「本当にいいものを残したい」という久住さんの想いが強く感じられ、同じ職人として非常に納得できる部分でした。今回、訪れたメンバー全員が仕事へのモチベーションをグッと持ち上げられた訪問となりました。

良質な土に恵まれた「国生みの島・淡路」。もし久住さんが淡路に生まれてなかったら...、と考えると、この島の存在はとてつもなく大きく感じます。左官に欠かせない土があり、リセットできる環境もあり、淡路は職人にはとても良い環境だと思いました。帰ってきたばかりですが、また久住さんのパワーをもらいに淡路を訪れたいな、と思っています。

今回のナビゲーター役のgrafの置田陽介さんと久住有生さん。

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