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grafが近畿2府4県を旅して考えるきれいなくらし

09.05.13

Chapter.1「久住有生さんの淡路島のアトリエを訪ねて」

久住さんを訪ねたのは、まだ肌寒い3 月。今回は、graf の男性メンバー3 名に加え、前回の 取材でお訪ねした滋賀・木之本の[冨田酒造]の15 代目・冨田泰伸さんにも参加して頂きました。

当日は、3月下旬の連休の中日で絶好の行楽日和。
さらに神戸・淡路鳴門道の土日祝の通行料の値下げもちょうどスタートして、神戸方面への高速道路は大混雑。

久住さんのアトリエに着いた頃には、大幅に約束の時間を過ぎてしまいました。 久住さんのアトリエがあるのは淡路市の東浦町。
工房のすぐ裏は海、淡路島らしいロケーションです。
工房には扉がなく、開けっ放しでオープンになっていて、中に入ると、大きな土でできた球体や、土の屏風、絵画のように額装されたものなど、一般的な左官のイメージからはかけ離れた"作品"がズラリ。
これらは全て、3月末~4月初めに銀座で開催された、久住さんの個展に出展された作品。

  • オープンに開け放たれた開放的な久住さんの工房。サンプルや原材料が積み上げられている。
  • 3月末~4月に銀座で開催された久住さんの個展に出展された「作品」

「この巨大な中が空洞のものは花器ですか? 左官というよりも陶芸っぽいですね。
少しヒビが入っているってことは、土でできてるんですよね?」

久住さん「それは、砂とかはあまり入ってなくて、粘土に藁だけ。
だから大きさのわりに意外と軽いですよ。200kg ぐらいかな、4 人で持てるぐらい。
普通は収縮率を落とすために、砂とか藁をたくさん入れて割れにくいようにするんだけど、そうすると強度が落ちるんですよね。
この花器は逆に強度がありすぎてヒビが入って割れてるんです。
でも日本の建築は上手くできていて、割れてるから弱いのではなくて、竹とかの素材がお互いに吸収しあって、保つって感じ」。

  • 魅入られたように作品をのぞき込むgrafの面々。
  • 表面のひび割れ具合が良い感じの丸く大きい花器。

「これよりも大きいものをクルマで東京まで運んだときも『バンバン跳ねてたけど割れなかった』っておっしゃってましたもんね。外に置いておくとどうなるんですか?」

久住さん「これは実際1年ぐらい、外にほったらかしにしてたんよ。
でも無くなることはないです。表面が荒れて、藁や中の砂利っぽいのが見えたりするくらい。ほんまはそれくらいの状態が一番きれいやと僕は思う。
今はこの色やけど、土を腐らせてあるから徐々に色が変わってくるはず。
年数が経つともっと面白いんやけどね」

冨田さん「強度は全然変わらないんですか?」

久住さん「変わらないです。雨で流れる以外は、永久的に保つものやからね。
土の建築って古いものは一万何千年前のものも残っている。日本にはないけどね。
ヨーロッパには歴史のある素晴らしい建築がたくさん残っているけど、それを修復する技術を持った職人がいないんです。
だから、一つの建築を700年振りに修復しようとなった時に、作業できる人がいないから日本から行ったりしている...。
もし職人が大事にされていたら、そこで直せるはずやもんね。
そうは言ってもヨーロッパはマイスター制度(※注釈参照)があるからまだマシで、日本は職人を育む土壌としては最悪でしょ。
昔はいい仕事をやったら次に繋がっていたのが、今は安い仕事をパッとできるとか、チラシとかでPRできる人の方が仕事が入るもんね。
職人の方から提案することを怠ってきたのも確かやけど、日本の現状だと、いい職人の仕事が受け継がれていかないですよね」。

冨田さん「それは僕の酒造りの仕事も全く同じですね。
今はほとんどが量販で、すごい作り方してますから。
僕らが手作りの技術を引き継いでいかないと、とすごく感じます」。

「今の子供たちも絶対に技術は持ってるはずやのに、教育の現場では工作などの技能系の授業は、危ないとか将来必要ないとか言われて減っているんです。
テクノロジーへ追いやられている教育がコワイなと思います。人間は本来、アナログですからね。grafでは子供たちへのワークショップなども積極的にやっていくつもりです」。

  • 左官職人の若手のホープと注目されている久住有生さん。
  • 仕事のことや作品について熱く情熱的に語る久住さん。

今回2度目、東京では初となる個展のタイトルは『土から土へ』。
土の屏風や巨大な花器、壁を壁に掛ける「壁アート」などの展示のほか、会場で「かまど」の実演製作という新しい試みも。そのテーマでもある「土」。
淡路島の土は地場産業の粘土瓦でも有名ですが、瓦用の土と左官で使う土とはまた別だそう。
左官には基本的にどんな土でも使えるけれど、やはり向き不向きはあって、磨けば光る仕上げで使う土、型枠に土を何層にも突き固める「版築」という原始的な壁に向く土など、それぞれ丁度良い粒度分布があるんだとか。

  • 渦巻きのような模様の、壁に掛ける「壁アート」
  • コレも「壁アート」。花びらのような赤やピンクの模様が...。
  • 色鮮やかな「壁アート」作品群。色や模様、土の表面も様々。中にはタイルのようなモノも。
  • いくつも並べられた「壁アート」を見ながら話す久住さん。

ちなみに久住さんは、左官で使う材料を全部自分で作っています。
自らダンプを借りて調達しに行くことも珍しくないとか。
実は材料へのこだわりこそ、久住さんの左官仕事の最大の特徴なんです。

久住さん「今のほとんどの左官屋さんって、自分達で材料を作らなくなってしまった。
メーカーが作った材料に、表記通りの分量の水を入れて練って塗るだけ。
だから表情も色も創りようがないでしょ。
サンプルの中から、設計士か施主か工務店が選んだものをただ塗るだけ。
自分で決めてやることがないんです。
それを僕は全部一から材料を調合して、自分で決めて塗る。
単純なことなんやけど、その違いが一番大きい。
淡路にはそういう職人さんがまだ多く残っていたんですよ」

その材料の作り方をきいて、全員さらに絶句。
てっきり材料を作るための土を砕いたり振るう専用の機械があるのかと思いきや、例えば藁なら、まずは振るいに掛けて(これだけで何種類も)、さらにそれを扇風機かうちわの風で飛ばして、ある一部分の距離まで飛んだ藁だけ使うとか!

久住さん「ただ細かいだけが良いんじゃないから。細かいけどコシがあるとかね。
だから材料を作るのにすごい時間が掛かるんよ。
でも、ただ言われたものを決まった場所に塗るだけの左官やったら、さすがに飽きるでしょ。材料から作る方がおもしろいもんね」。

と、サラッと言い放つ久住さん(それがまたカッコいい)。
そんな気の遠くなる話はまだまだあって、一つの現場のために、仕上げの壁のサンプルを70種類近くも作るとか、一見似たように見える壁でも、方や10分で塗れるものもあれば、微妙なタイミングとバランスを考慮しながら繰り返し塗るのに1日掛かるものもあるとか...。
冨田さんは、そんな久住さんのアナログな物造りが、[冨田酒造]の酒造りに通じるものがある、とすごく共感していました。
grafの家具職人の二人もまた、一人のお客さんのためだけにサンプルを何十個も作るといった徹底した久住さんの仕事に、家具の制作工程とは異なるものの、頭が上がらない様子。

  • コレが原材料の土。粘土や砂の配合によって強度や収縮率を調整する。
  • 工房の棚に積み上げられた数千ものサンプル。
  • 一つの現場のために、壁のサンプルを数十と作る。材料の作り方や塗り方によって、壁の質感が全然、違ってくる。

※マイスター制度
職人の国、ドイツで1953年に生まれた、職人の技能と理論を実践と教育で培う制度。
子どもたちの適性に沿った職能教育としてのマイスター制度が確立しているヨーロッパは、職人の技術のレベルを高く保つ上でも、人材の育成という点でも、国家として社会として職人を育む土壌ができている。

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