
12.02.22
ベランダや庭のちょっとしたスペースを使って植物を育てたり、野菜づくりをする人が増えてきました。街なかで暮らす人たちにとって、植物のあるくらしはひとつの憧れです。ましてや自分で育てた野菜を食べるなんて、すばらしい体験です。いままでどんなカンタンに育つ植物も枯らし続けてきた編集者が、この春一念発起し、潤いある植物のあるくらしを目指して野菜づくりを始めます。この新連載は植物とともに悪戦苦闘する日々をレポートしていきます。
写真/市川かおり
年が明けて、まもなく立春。旧暦では、立春までは12月。旧正月は大寒のあとの新月から始まります。一年のうちで寒さがもっとも厳しい季節、この時期に畑や田んぼに生えている野草は、強い生命力の証。自然界には1年間のリズムがあり、七草のあとに、2月頃にフキノトウ、そのあとにヨモギやセリ...と次々に野草が出てきます。その自然のリズムに合わせて、野菜をいただいていくのが人間にとって一番良い栄養になるとされています。
今回は、屋上庭園を飛び出して、フィールドワークとして京都郊外の畑と田んぼに出かけて、七草を採集することに。
春の七草というのは、セリ、ナズナ、ゴギョウ(ハハコグザ)、ハコベラ(ハコベ)、ホトケノザ(コオニタビラコ)、スズナ(カブ)、スズシロ(大根)。この7種の野菜を刻んで入れたかゆを七草がゆといい、邪気を払い万病を除くものとして昔から食べられてきました。お正月のごちそうで疲れた胃を休め、野菜が乏しい冬場に不足しがちな栄養素を補うという効能もあります。畑や田んぼのあぜに生える7つの植物を食べるというのが、そもそもの七草。今回は、セリは見つからなかったので、屋上庭園の水菜で代用しました。
今回、田んぼをご案内くださったのは、京都郊外の向日町で代々農業を営む斎藤尚志さん。米作りをして35年、コシヒカリなどを育てる米農家です。早朝に向日町駅に集合し、斎藤さんの車で田んぼへ。用水路の近く、湿度が高いあぜ道に狙いを定めて、七草探しをスタート。植物博士の古鍛治さんは、次々に七草を発見していきます。図鑑と照らし合わせながら、ナズナやゴギョウを採集。その後、川べりや斎藤さんの畑に移動し、ほんの1時間程度で6つの七草が揃いました。
採取した野草を持ち帰り、さっそく七草がゆに。本来は、前日の夜のうちに刻んでおき、7日の朝にいただくものだそう。今回は、おかゆを炊いている間に、斎藤さんの畑で採れた大根とすぐきで、柚子大根とスグキの炒め物も作りました。
七草は細かく刻んで、炊きあがったおかゆに混ぜます。野草独特の香りが立ち上り、苦みが強いかな?と思いましたが、食べてみるとなんとも素朴で、滋養のある味わい。日本版のハーブのような感覚で、香りがよく、とてもおいしくいただきました。

今月の参考図書 「野草の力をいただいて 若杉ばあちゃん食養のおしえ」若杉友子著(五月書房)
京都・綾部の山奥に移り住み、野草と自家製野菜でほぼ自給自足の生活を実践する若杉おばあちゃん。70歳を越えても老眼鏡も補聴器も使わず健康そのもの。野草料理教室を主宰。
「野草の力をいただいて 若杉ばあちゃん食養のおしえ」若杉友子著(五月書房)1,575円
教えてくれる人
今回のゲスト
兼業農家 齊藤尚志さん
今回、七草を探して畑を案内してくれたナビゲーター。米作りをして35年、向日町の大きな農家に生まれ、京阪神エルマガジン社の営業部長をしながら、実は本気の兼業農家。会社勤めも田畑仕事も同じぐらい大切。以前は畑仕事が大嫌いでしたが、最近はけっこう面白くなってきたそう。採れたての野菜は会社に持っていき大好評。老後は好きなものだけを作って自給自足するのが夢。
造園家 古鍛治達也さん
造園家。植物事務所COCA-Z代表。芦澤竜一建築設計事務所の屋上菜園の指南役。
植物事務所COCA-Zhttp://www2.odn.ne.jp/coca-z/
芦澤竜一建築設計事務所 市川かおりさん
芦澤竜一建築設計事務所のお手伝い。建築写真家。屋上菜園の牽引役。種選びから栽培方法、最後は料理まで引き受けるみんなのお母さん的存在。本連載の写真を担当してくれます。
芦澤竜一建築設計事務所http://www.r-a-architects.com/
習う人
EEIE編集部 北島彩
植物は必ず枯らしてしまう植物音痴。ミミズも虫も触れないけど、おいしい野菜づくりには興味津々。1年間、芦澤竜一建築設計事務所の屋上菜園に弟子入りを決意。