
10.05.19
熱くて情熱的、どこまでも突っ走る...。
そんなマンガの登場人物たち。本当にいたらめんどくさい? いや、これがけっこう共感しちゃうんですよね、私。そんな物語をおおいに盛り上げてくれる、よりすぐりの突っ走り選手権、開幕! 勝利はどの主人公の手に?
『働きマン』安野モヨコ(講談社モーニングKC)540円
主人公・松方弘子は週刊『JIDAI』の女性編集者。いったん仕事モードに入ると寝食・恋愛・衣飾・衛生の観念を消去し、血中の男性ホルモンが増加、通常の3倍の早さで仕事をする。そんな彼女のあだ名は「働きマン」。菅野美穂さん主演でドラマ化もされたので記憶に新しい方もおられるのでは。まさに主人公の松方は、突っ走る系のいい働きマンです。そしてこのマンガのいいところは、現場(仕事場)の張り詰めた空気感がリアルに紙面から伝わってくること。また仕事人間の松方だけを描くのではなく、私生活と仕事の葛藤、そして松方を通して見えるさまざまなタイプの働きマン達が描かれていること。彼女の視線を通して「働く」とは何かを問う、突っ走る人もそうでない人も、サラリーマンの必読マンガです。私も仕事に煮詰まったりすると必ず読み返して、彼女の情熱をお裾分けしてもらっています。突っ走る女、魅力的です。
『バンビ~ノ!』せきやてつじ (小学館ビックコミックス)530円
主人公の伴省吾は福岡のイタリアンレストランでバイト中の大学生。料理が得意な伴は将来彼女と店をひらくのが夢。バイト先の店長に、店長の弟弟子がオーナーシェフをしている六本木のレストラン[バッカナーレ]での修業を勧められ、軽い気持ちで東京へ。料理の腕に自信のあったものの、そこで鼻をへしおられることに。料理人魂に火の点いた伴は大学を休学し、彼女を残して単身東京に移り、[バッカナーレ]で本格的に修業をすることになる。そんなバンビ(イタリア語で赤ん坊の意味)の成長物語。こちらも嵐の松本潤さん主演でドラマ化されましたね。とにかく熱い! 熱すぎる突っ走る系のバンビこと伴。でもこの暑苦しさがなんだか心地いいんですよね。物語の中のバンビやその周りの人々の働く姿勢のまっすぐさは、仕事だけでなくすべてに必要なこと。だから失敗してもそれを糧に成長していくバンビは見ていて飽きないんです。またバンビの福岡弁がいいんですよ。まさに突っ走る男・バンビと一緒に成長したくなる作品です。
『アオイホノオ』島本和彦(小学館ゲッサンコミックス)540円
時は1980年代初頭、大阪大作家芸術大学映像学科1回生・焔燃(ホノオモユル)は、テレビ・アニメ・映画の講義を受けながら近未来、マンガ家になろうともくろんでいた。マンガはアニメほど絵の技術は問われないし、今のマンガ誌は絵のド下手なマンガ家が人気連載を持っている。しかもオリジナル色ではなくパロディ感覚が多数。マンガ業界全体が甘い! 甘くなっている! と熱い闘志を燃やすモユル。今ならいつでもプロになれるという自信がある...がしかし行動に起こさないモユルであった。この主人公のモユルもまた暑苦しい奴です、心だけはいつも突っ走る系。志が高くて、根拠のない自信、でもなかなか行動には起こさない。行動は起こさないのにいつも上から物を言う素人といったところ。でもこのモユル、じつは著者・島本和彦さんご自身。だから時代背景や登場人物にリアリティがあります。しかもモユルは島本さんなので、のち何かしらの行動を起こし成功するわけですから安心して読めるんです。なにもしない突っ走る系、これもなんだか共感してしまいますよね。モユル、意外とイヤな感じしない...というか親近感がわくタイプの奴なのでご安心を。

八木泉(ジュンク堂書店千日前店)/漫画一筋、書店店員。
漫画一筋、書店店員。酒と漫画と男と女、それさえあれば生きていけます。この3人の中で私的に一番突っ走る系はやっぱりバンビかな~? でもバンビ、ほんまにええ奴です。[ジュンク堂書店千日前店]は相変わらずおもろいフェアと品揃えで皆さまをお待ちしております。