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PICK UP ~編集部のおすすめ~

くらしのしお

13.10.22

住まいづくりは体験し実感することから 「知っている」ということと「理解する」ということ

『バカの壁』という本をご存じですか?
2003年に出版された養老孟司さんが書いた有名な本です。
私はこの本を2012年に読みました。
とてもよい本だから読んでみては?と知人に勧められていたにもかかわらず、9年間もほったらかしにしていました。

インターネットやバーチャルな世界が当たり前になったこの時代、改めて考えることが必要になったことがあります。それは「知っている」ということです。
テレビやパソコン等である映像を見たら、それはもう「知っている」ということになるのでしょうか?
養老孟司さんは、この「知る」ということを脳科学的に論じておられるのですが、
要は、目の前のコトやモノをただ「知る」という次元から、「理解する」という次元に持って行くにはどうすればいいのかということがいろんな角度から書かれています。

【「フローリング材の木の種類はどのようなのがいいでしょうか?」という質問】

このフレーズは無垢のフローリング材を決めるときにクライアントからよくたずねられる質問です。
まず機能的な条件から答えるのは簡単で、床暖房を使うのであれば、熱で変形しにくい栗(クリ)材などがよいでしょう。
床暖房を使わないのなら、選択肢が広がります。
建築士が薦めるものになることもあるでしょう。薦められたのが2~3種類あれば、クライアントはその中から選ぶわけですが、その2~3種類でも悩まれる方も多いです。
そういうときに、決め手となるのは、実際に触ったり、フローリング施工されたところに足を踏み入れたりすることで実際に自分で良いか悪いか感じてみることです。

【相手の気持ちを理解する】

住宅設計をするときは、クライアントの現状の住まい方を把握することからはじまります。
住み手が無意識に行っている行為も、習慣としてとても重要な家事手順の一つである場合も多いからです。
もちろんヒアリングも行いますが、クライアントの顕在的な気持ちを聞き取るだけではなく、潜在的な習慣も把握して、設計につなげることをとても大切にしています。
耳の遠い(聞こえづらい)お年を召したクライアントの住宅を設計したときは、玄関先に来客が来たらすぐ分かるような工夫をしました。

先日、グランフロント大阪の積水ハウスのショールーム【住ムフムラボ】に行ってきました。
このショールームの中には「ダイアログ・インザ・ダーク」があり、それを体験しに行ってきました。

「ダイアログ・インザ・ダーク」とは、1988年にドイツで、哲学博士アンドレアス・ハイネッケの発案によって生まれました。今では世界 30か国・約130都市で開催されています。
日本では1999年11月に初めて開催され、現在は東京・外苑前と、グランフロント大阪の2ヶ所の会場にて開催中です。これまで約10万人が体験しています。
※「ダイアログ・インザ・ダーク」公式サイト http://www.dialoginthedark.com/

ひとことで言うと、「暗闇のソーシャルエンターテインメント」。
参加者は、グループを組んで暗闇に入りアテンド(視覚障害者)のサポートで、中を探検します。視覚以外の感覚を使って進んでいくのですが、その中で、コミュニケーションの大切さと、人のあたたかさを再確認することができます。

これで気づいたことは、普段の生活ではほとんど視覚を頼って生きているということ。
視覚障害者の気持ちを理解するには、その環境や条件を自ら体験することが一番大事です。

視覚以外の感覚を駆使して、周囲の環境や相手の気持ちを理解する

【クライアントの気持ちを理解する】

住宅を設計するときは、クライアントの気持ちを理解するためにいろんなアプローチをします。
私が行っている事例で紹介しましょう。 ・現在の住まいを調査する
実際に今住んでいる家を見せてもらって暮らし方を把握します。家族の暮らしは十人十色。
クライアントの暮らし方にも癖があり、それを的確に読み取ることが必要です。

・「住まいづくりのカルテ」を書いてもらう
これはクライアントに書いてもらうのですが、クライアントが意識的に行っている行動を書いてもらいます。意外とクライアント自身の再発見となり、クライアントの意識付け(動機付け)にもなっています。
質問の例
「食事は椅子式ですか?座敷ですか?」「料理は主に誰がしますか?」
「来客の頻度は高いですか?」「布団はどのくらい頻繁に干しますか?」
「化粧はどこで行いますか?」「服の着替えは主にどこでしますか?」
など、普段意識していない質問などをして、明文化していきます。

・マインドマップを書いてもらう
「マインドマップ」とは、トニー・ブザン(Tony Buzan)が提唱した思考・発想法の一つで、頭の中で起こっていることを目に見えるようにした思考ツールのことをいいます。

中央には、例えば「あなたにとって住まいとは?」というお題を出して、イメージをふくらませていきます。
書き込み方は慣れていないと難しいですが、声かけをしていきますので連想することがどんどん出てきます。すると、今まで意識していなかったイメージコンセプトの糸口が見えてくることもあります。

私が、「あなたにとって住まいとは?」という題でマインドマップを書いてみました。
連想ゲームと同じで、自分が思っていなかった言葉が次々と出てきます。
潜在的なところで感じていたことだと思います。

自分も考えていなかったような発見もありますので、一度頭の整理で書いてみても楽しいでしょう。

また設計が進み、図面を説明する時には、次の手段もあります。
・簡単なイメージイラストを書き、イメージを共有する
ある程度プランができていても、図面だけではイメージが伝わらなくて、できあがってから、
「こうなるとは思っていなかった・・・」
とクライアントが後悔する前にイメージを共有する必要があります。
図面の中で「この部分はどうなっているのかな?」と疑問があれば、建築士に何でも聞いてみましょう。簡単なスケッチパースを書いて、お互いの誤解がないようにしたいものです。

  • レストランのファサードを検討したときのイメージスケッチ
  • 平面図に人の動きを加えて、使い方のイメージを伝える

【設計を進めながらクライアントを理解する】

設計を進めながら、クライアントとの信頼関係を築いていくようにしています。
建築士は(少なくとも私は)、クライアントの代理者、代弁者、味方として工務店とのやりとりや確認申請の手続き等の対応をしています。
そういう意味では、建築士はクライアントの思いを汲み、理解するために、様々な実体験をする必要があります。
クライアントも、今からできあがる空間を理解するために、できるだけ現実に近い体験をすることも大切です。
この協働作業をすることで、建築士とクライアントの信頼関係も深まっていくと思っています。

バカの壁
養老孟司著 新潮新書

くらしおデザイン室ホームページ

http://kazuyo3.jimdo.com/

家事、子育て、高齢者(ユニバーサルデザイン)に配慮したデザイン、エコハウス(パッシブハウス)を中心に手がけています。
上記のサイトの「お問合わせ」から、タイトルを「住まいの相談」と明記し、お送り下さい。
お送りいただいた内容で多かった内容は、この連載でお答えします。

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about
山本和代: 住宅建築、グラフィックデザイン等を手がけながら1児の母として、家事、子育てと奮闘しています。
気さくで、おおらかな性格。小さなことから小さな幸せを見つけるのが好きで、毎日を楽しく過ごしています。

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